【大学特集】
たくましい知性を
身につけてほしい

早稲田大学 

早稲田大学は、東京専門学校を前身として1882年に創設され、今年142年を迎える。第17代の田中愛治総長は23年間、早稲田大学以外で幅広い経験を積んだ、インブリーディングではない戦後初の総長である。田中総長は「学生たちにはたくましい知性を身につけてほしい」と語る。

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文理の壁を越えた教育を

早稲田大学は、大隈重信が創設した140年以上の歴史を有する私立大学です。13の学部が個性的で特色のある教育を行っており、特に政治経済学部は、近年入試改革を進めるなどの先駆的な取り組みを行い、私学トップの評価を受けています。

2004年には、政治学科と経済学科に加え、国際政治学科が設置されました。この学科では、国際社会が直面するさまざまな問題に取り組むために必要な政治学と経済学の両方を体系的に学ぶことができます。そのため、国際政治学科の学生は1年目に、経済数学入門やゲーム理論入門、統計分析入門などを必修科目として履修します。これは、文系の学部でも数学の知識が必要であるという考えから必修科目としたもので、政治学を学ぶ上でデータ科学の基礎となる統計分析は不可欠であり、そのため2021年度の入試からは数学ⅠAの試験が追加されました。

国際政治を学ぶ学科であるため、英語力の向上も重要視されており、政治学や経済学を英語で学び、学位取得ができるEDP(English-based Degree Program)というプログラムも提供されています。このプログラムは、海外からの留学生や帰国生に人気がありますが、その中には日本人学生も参加しています。

早稲田大学では文理の壁を越えた教育を提供しています。高度な英語力と政治経済の専門知識、そして政治経済を深く理解するための理系の知識を兼ね備えるためには、一定の負荷がかかりますが、それに見合うだけの成長が期待できるでしょう。

その結果、政治経済学部の偏差値は、2021年から2023年までの期間で私学でトップとなりました。世界で活躍し、さまざまな分野で輝いている先生方が教壇に立ち、学生たちに貴重な知識を伝授してくれている。この優れた教育環境の成果だと思います。学生たちはこの教育環境を最大限に活用し、自身が打ち込める学問を見つけ、成長していってほしいと期待しています。

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夢中になれるものを見つけてほしい

私は早稲田大学政治経済学部を卒業してから、10年間以上アメリカで計量政治学を学びました。当時はパソコンが一般的ではなかったため、大型計算機を使用して政治学の分析を行うためにはアメリカに渡るしかありませんでした。

統計学の学習を通じて選挙の分析や世論調査に興味を持ち、その知識を日本で生かしたいと考え、一般企業等への就職を検討しました。しかし、周囲の推薦もあり、最終的には大学教授の道を選びました。

初めて教師の道を考えたのは32歳の頃で、比較的遅いスタートでした。三つの大学を経て、最終的に早稲田大学に教員として戻ってきたのは、47歳の時でしたから、総長になるとは当初考えてもいませんでした。戦後、本学で助手を経験せずに総長に就任したのは私が初めてです。幅広い経験を積み重ねてきたからこそ、多様な視点を持っていると自負しています。10年半の米国留学を含む23年間を学外で過ごした経験を生かし、早稲田大学を世界で輝く大学にしていきたいと考えています。

学生たちに伝えたいことは二つあります。まず一つ目は、自分の頭で考え、物事を分析できる社会人に成長してほしいということです。私はこれを「たくましい知性」と表現しています。学問は知識をただ覚えることではなく、答えのない課題に直面した際に、自ら考えて解決する知性が重要です。新型コロナウイルスや戦争といった複雑な課題にも対処するためには、自己の頭で考えるスキルが不可欠です。学生が社会に出てから、日々の仕事で遭遇する問題の大半は答えが一つではない、または答えが用意されていないものです。その瞬間に適切な答えを自身で導き出すための知性を身につけてほしいと願っています。

次に、4年間で何か一つ、夢中になれるものを見つけてほしいということです。損得勘定にとらわれると、人は80%しか力を発揮できません。たとえそれがニッチな分野であっても、自分が情熱を傾けられるものであれば、120%の力を発揮できるでしょう。早稲田大学には多様な学生が在籍しており、学問に秀でた者だけでなく、スポーツや音楽で著名な者、芸能人など、あらゆるバックグラウンドがある学生が平等に受け入れられています。誰にでも居場所があるところが、本学の魅力だと考えます。大学での学生生活を充実させ、何か一つ自分を夢中にさせるものを見つけてほしいですね。

早稲田大学 総長

田中 愛治

1951年生まれ。75年早稲田大学政治経済学部卒業後、85年米国・オハイオ州立大学大学院博士課程修了、政治学博士(Ph.D.)。東洋英和女学院大学助教授、青山学院大学助教授、早稲田大学政治経済学術院教授等を経て現職。現在は日本私立大学連盟会長を兼務

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