プロが教える知識で
金融リテラシー向上
トリオアセットマネジメント株式会社
個人投資家向けに株式投資のコンサルティングを行うトリオアセットマネジメント株式会社。高校で金融教育が義務化されるなど、金融リテラシーの重要性が高まるなか、奥村尚CEOは「間違った情報に惑わされず、プロが教える正しい知識を持つことが、正しい行動につながる」と力を込める。
証券会社でたたき込まれた基礎
奥村CEOは2014年、長年携わってきた金融業界とIT業界のノウハウを形にしたいと起業した。そこには、インターネット上にあふれるさまざまな個人投資家向けの情報に惑わされない正しい知識を持った人を増やしたい、という思いがあった。「高度なチャート分析や独自に編み出したノウハウといった商材の発信も多いですが、証券会社出身の人はほとんどいません。サッカーを習うならプロサッカー選手、といったように何かを学ぶならプロにお願いするのが正しいはずなのに、なぜ皆さん素人の言葉に惑わされてしまうのか。そこで、証券会社出身で正しい知識や経験を持つ自分が何とかしないといけないと思いました」と振り返る。
同社のモットーは「正しい知識、正しい行動」だ。奥村CEOが「チャート分析で成功した人は多くいますが、皆さん金融リテラシーを持った上で、チャート分析をエッセンスとして使っている。料理にゴマをかけるようなものなんですよ。ゴマだけではお腹はいっぱいになりませんから。まずは料理としての金融リテラシーを身に着けることが先決です」といい、正しい金融の知識を持ってもらうことから始めている。
奥村CEO自身、金融証券会社の経済研究所でキャリアのスタートし、金融の基礎を徹底的にたたき込まれたという。「経済研究所では、金利を最初に学びます。金利が分からないと株も債権もFXも何も説明ができない。逆を言うと、それを知れば全部説明ができる。金利が見えると経済も分かりやすく見えてくる。その原点があるからこそ、私の説明には説得力が増すと思っています」と話す。
さらに奥村CEOはIT分野に精通しているのも武器の一つだ。元々工学部でAIを専門にしていたこともあり、日興証券入社後は、ノーベル経済学賞受賞者のウィリアム・シャープ・スタンフォード大教授と投資モデルの開発の共同研究も行った。「開発で要求された能力はアナリストとしての実力でも、語学力でもなく、いわゆるコンピューターサイエンスでした。統計分析をしたり、プログラミングを組んだり。実は証券会社で必要なものはコンピューターだった。その後はITというセクターで金融会社向けにインターネットの活用法などをコンサルするようになりました」といい、金融とITを主軸とするビジネスに長年携わってきた能力を生かしている。
金融資産で日本は変わる
奥村CEOの株式コンサルティングは、正しい基本的な知識を身に付けたあと、個人投資家として独り立ちすることをゴールとしている。奥村CEOは「知識を元に自分の頭で考え、自分だけの力で調べて検証もできる、というのが理想的な目標達成。最初は何も分からない状態ですから我々のような投資助言業が必要になってくるでしょう。それこそ分かりやすく情報を出して、その通りにやってもらいますが、ただ学ぶだけでは全く面白くない。そこからの実践が何よりも重要です。自分のお金を増やすということをモチベーションにして、巣立ってもらうことが一番」と語る。
コンサルティングの契約は半年で、中高年の利用が目立つという。「老後2000万円問題などと言われていますが、金融リテラシーがあれば安定した運用ができ、それを不安に思うこともない。将来的にはすべての人が金融リテラシーを身に付け、預貯金を止めて株式で運用する世界になればいいと思っています」と力を込める。
奥村CEOは、お金を効率的に運用できるノウハウを広めることで、同社は日本の金融リテラシーの向上に寄与したいという。「今、日本の個人資産は2000兆円あると言われています。それを株式投資に回し、仮に毎年1割増えるとすると200兆円プラスになる。金融資産も立派なGDPになりますから。そうすれば、日本は変わる。10年後は、そんなバラ色の世界になっていたらうれしい。個人がそれぞれに金融リテラシーを持つために努力する。あるいはそういう教育基盤を整えることができれば、その世界は実現に近づくと思っています」と展望する。
トリオアセットマネジメント株式会社CEO
奥村尚
1987年、東京都立大学院修了後、日興証券入社。数々の数理モデルを開発。1997年、日興リサーチセンターCIOなどを経て、2014年にトリオアセットマネジメント株式会社を設立。
http://www.trio-am.co.jp