循環型ものづくりで
ローカルから世界へ
東ポリ株式会社
半世紀にわたりリエチレン系フィルムなどを原料にした産業用包装資材袋の製造を続けてきた東ポリ。「我々の製品は、さまざまな製品の”名脇役”として残っていくもの」と語る蓑輪忠温代表取締役に、サステナブル(持続可能)なものづくりについて聞いた。
残り続ける”名脇役”をつくる
1972年の創業以来、ポリエチレン系フィルムなどを原料にした特殊形状の産業用包装資材袋の製造を主軸としており、生きたウナギを養殖地から各地へと運ぶ「活鰻(かつまん)袋」は市場の9割を占める。「静岡という土地柄、最初はウナギの餌袋から始まったといい、活鰻袋も、たかがウナギを運ぶだけと思うかもしれませんが、少しの衝撃でも破れないような特殊加工には秘伝のノウハウが必要です」と明かす。
同社の製品は、袋以外にも機材カバーなどさまざまな場所で使われている。蓑輪代表は「なかなか主役になりませんが、ありとあらゆる産業で袋やカバーは身近なもの。例えば、テレビがブラウン管から液晶に変わっても、カバーは全く変わっていません。テクノロジーの進化や環境問題など急激に変化している時代ですが、どの製品も、変化していく主役の隣で残り続ける“名脇役”だと思っています。今後もお客様の求められる製品をしっかりと提供していきたい」と語る。
カスタマイズ製品の受注も多い同社では、スピード感とこまめな対応が特徴で、コロナ禍やウクライナ危機など世界的な物流危機の影響にも、国内外に生産拠点があることを生かして対応している。「バンコクにある提携工場からの製品については、従来の2~3倍の納期がかかっていますが、海外からの輸送を待っている間に、国内の工場で同じものを作って納品しています。例えば、1万枚の発注があっても、すぐに使うわけではないので、当面必要な量だけを納品して対応しています。また、カスタマイズ製品については、提案する過程でイメージがわきやすいように、すぐにサンプルを作成するなどスピード感を大事にしています。長年変わらない我が社の価値として、今後も極めていきたい」と胸を張る。
10年後も「任せたい」と言われる企業に
4代目となる蓑輪代表は、地域に貢献しながらものづくりをすることと従業員の幸福度にこだわっているという。「ローカルな中小企業ですが、世界に流通する製品を多く生み出していることを従業員が意識すれば、やりがいや誇りをもってもらえる。ローカルは運命共同体のようなところもあり、そういった特徴的な文化や社会性も大事にして、社員をはじめ関わってくれた人と長く関係を築いていきたい。ウェルビーイングを追求できる会社にすると同時に、10年後も取引先から『東ポリに任せたい』といわれる会社であるためには、エネルギッシュさも必要だと思うので、若い人に就職先として選んでもらえる会社になれるよう、その最適解も追求していきたい」と話す。
また、同社の主力製品の原材料となるポリエチレンは、石油由来原料であり、海洋プラスチックがSDGs(持続可能な開発目標)の課題となっているが、「プラスチックが、ごみになる前に果たしてきた役割が全く語られず、単に悪者と切り捨てられてしまう風潮が強くなっていくのではないかと懸念していますが、その機能や役割、価値をちゃんと訴えていくことが必要になってくる」と訴える。
例えば、同社の製品であるドラム缶に使う丸底の内袋は、ドラム缶を汚さずに使えるため、洗浄回数を減らし、ドラム缶自体の寿命を延ばすので、結果的にドラム缶製造に関わるCO2の削減につながっているという。「使用後の製品を回収して再利用したり、加工の際に出たロスをリユースしたり、といったことも始めています。ポリエチレンの利点などをもっと知ってもらえるような活動にも取り組みつつ、循環型のものづくりをしていくことも目標です」と語る。
長年、静岡の地で“名脇役”を作り続けてきた同社は、地元サッカーチームのスポンサーとなり、選手に働く場所を提供するなどサッカーを通じた地域貢献も行っている。サステナブルな循環するものづくりで、地域とともに、さまざまな業種を支えていく。
東ポリ株式会社代表取締役
蓑輪忠温
1970年、静岡県出身。早稲田大学卒業後、電機メーカーに入社。商社に転職し、営業職などを経て、東ポリ株式会社に入社。2009年に代表取締役に就任。
https://topoly.jp/