【大学特集】
価値を創造する人間の育成を

創価大学

東京都八王子市に位置する創価大学は、地域連携に力を入れる国際色豊かな総合大学だ。鈴木将史学長は「多様性のある教育環境を存分に生かして、さまざまな価値観に触れ、価値を創造してほしい」と語る。

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地域と共に成長する国際大学

創価大学は国際色豊かな総合大学として、2014年から2023年まで文部科学省が実施している「スーパーグローバル大学創成支援」事業の採択を受け、2回の中間評価で最高評価を獲得しています。留学生が約700名在籍し、68か国・地域の257大学と学術交流協定を締結しています(2024年1月末現在)。留学生との交流が日常的に行われるのが、本学の大きな強みです。

また、地域連携にも力を入れています。創価大学が位置する八王子市では、酒米が生産されており、日本酒を製造する際、米を大量に削ります。その過程で生産量の半分以上が米粉となって捨てられるので、それを使って何か作れないかとの思いから、本学理工学部のゼミでは廃棄される米粉をもらって、バイオプラスチック商品を作りました。まだ製品にするには採算が合いませんが、高い評価をいただいております。

他にも、八王子市と共同で進めているプロジェクトとして、トロイ遺跡を発見したドイツの考古学者のハインリヒ・シュリーマンが幕末、八王子市に来ていたという記録があり、そのエピソードで八王子の町おこしができないかと考え、さまざまなイベントを開催しています。例えば、町の本屋にシュリーマンのコーナーを作ったり、八王子市の名物菓子「都まんじゅう」にシュリーマンの焼き印を押したりと、八王子市を盛り上げていく施策を考案しています。

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さまざまな価値観に触れてほしい

小さい頃から数学が好きで、大学院まで数学に没頭してきました。論理的に筋が通り、答えが明確に導き出せるという感覚は非常に充実感を与えてくれます。大学院生として就職先を探していた際、指導教員が紹介してくれたのが愛知教育大学の数学教員です。これがきっかけで学校教育の世界に触れ、教育大学での教育研究を通じて教育の重要性を実感しました。この出会いは本当に運命的でした。

 本学は「創価教育」を実践しています。創価とは価値を生み出すことであり、価値を生み出す能力を持つ人間を育てることを指します。人間は自ら物質を創造することはできませんが、価値を創造することはできます。価値を生み出す人間とは、困難な状況に直面したときに、原因を考え、解決策を見出し、主体的に行動して問題を解決しようとする人物と考えています。

 この創価教育はさまざまな海外の大学で研究、実践されています。アメリカのデポール大学では、創価教育の研究を専攻して博士号を取得することができるほどです。宗教や文化の違いにより、「創価教育」の捉え方は国によって異なります。しかし、共通しているのは、人間の可能性をどのようにして開くことができるかという問いです。異なる国々の情報を共有し、人間の成長と価値創造のために協力していきたいと考えています。

学長に就任してから、9つの国と地域を訪れる機会がありました。どの国の若者も活気にあふれ、情熱がありました。反対に、日本の若者は海外へ出ていくことに消極的だと言われます。日本では大学受験や就職活動が特定のパターンに固定されがちですね。多くの場合、塾に通い、できるだけ高い偏差値の学校に進学するという一定の流れがあります。また、就職活動も同様で、一流大学から一流企業へというレールに早く乗ることが成功への鍵であるという考え方が広がっているように感じます。

 私はこのような既定のレールに縛られないでほしいと思います。自分にとって何が最も重要か、その目標に向かってどのような人生を歩むべきか、学生たちが自ら考え、行動できるような勇気を持ってほしいのです。そのためには、自分の価値観を見直す必要があります。価値観を変える一つの方法として、私は「さまざまな人と関わること」を挙げます。留学やクラブ活動、寮生活など、さまざまな手段がありますが、異なるバックグラウンドを持つ人々と触れ合うことは、新しい価値観に触れることにつながります。価値観の変化を恐れず、自分の可能性を追求していってほしいと思います。

創価大学学長

鈴木将史

1959年生まれ。東京大学理学部卒業後、東京大学大学院博士課程単位取得満了退学。 その後、愛知教育大学助教授、創価大学教育学部教授、学部長、副学長を経て、2022年から現職。

https://www.soka.ac.jp/