モノづくりと環境
その親和性とは

株式会社スノーピーク

アウトドア事業などを展開する「スノーピーク社」の業績が好調に推移している。2020年度の連結業績は、売上高が前年比+17.6%増収の167.6億円、営業利益は前年比+61.6%増益の14.9億円と増収増益を果たし、2021年度も更なる業績アップを見込む。コロナ禍で社会の密接回避が追い風になっている、と思うかもしれないが、業績向上の背景はそれだけではなさそうだ。スノーピークの根底にあるモノづくりへのこだわりと環境や文化への思いを紐解く。

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創業時から高品質なモノづくりを追求

スノーピークは1958年創業者、山井幸雄の「本当に欲しいものを自分でつくる」という志のもとに生まれた。創業地は新潟県・燕三条、金属加工で世界的に名の知れた地域だ。登山用品など高い品質が要求されるギアの商品製造に地域の金属加工技術を活用してきた。
また、地表にダメージを与えない「焚火台」を発売するなど、環境にも配慮した製品づくりも行ってきた。その後もオーガニックコットンの使用、回収したアパレル品から採取した再生糸の使用など、環境にやさしい商品開発を継続している。今後はテント・タープ類から服へのリサイクル品の開発も進めていくそうである。

スノーピークでは全製品「永久保証」をうたい、顧客からの依頼があれば責任をもって修理する。その背景にあるのは、道具との関係をずっと大切にしてほしい、との思いだ。サステナビリティ(持続可能性)を大切にし、使い捨てでなく長期間利用できるような商品提供と自然環境への負荷も念頭に置いた商品開発を行っているのである。

例えば、椅子やテーブルなどアウトドアギアでは、300mm、600mm、660mmといった「快適基準寸法」を決め商品開発を行う。一定の基準を設けることで、20年ほど前から発売しているグリルテーブルに新商品のオプションを組み合わせるなど、長期間の使用が可能になる。また、技術や文化のサステナビリティを大切にしているのも、スノーピークの特徴の一つだ。地域の金属加工技術の活用のほか、アパレル製品の開発においても地元の生産者と共同で制作を行う。土地に根付いた生地や衣服に注目し「LOCAL WEAR」ブランドとして地元である新潟県内、岩手県一関市の地域性を込めた製品をリリースしている。

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ユーザー目線の追求

ユーザー目線を追求し、売上のV字回復を実現

製品づくりの特長は、ユーザー目線の追求だ。新潟県にある本社にはキャンプ場を備え、ユーザーに限りなく近い場所で製品づくりを行っている。開発に際して最も大切にしているのはユーザーからの声だ。1998年には「Snow Peak Way」というキャンプイベントを開始。「高い」「品揃えが悪くて買えない」といったユーザーからの言葉を生かし、販売体制を見直した。その結果、日本でオートキャンプ人口が減少していく中、スノーピークの売り上げは2000年を境に増収へと転じることとなった。
2021年12月、スノーピークは1月1日から9月30日までの連結業績を発表した。売上高は183憶9300万円で、前年に比べ160%アップ。経常利益も8憶100万円から26憶9600万円と336%アップし大幅な増収増益を達成した。報告書の中では、新型コロナ感染症の影響に懸念を示しつつも、蜜を避けたアウトドアレジャーへの人気の高まりを受け、今後も業績の向上が見込めると分析している。

地球上の全てのものに良い影響を

スノーピークの企業理念は「地球上の全てのものに良い影響を与える」。ミッションステートメントとして「自然志向のライフバリューを提案」「感動品質の体験価値を提供」を掲げ、自然志向のライフバリューを、すべてのライフステージへ広げていくとしている。キャンプをしない人たちに、いかに新しいライフスタイルを提案できるかが、今後の大きなテーマと考え、“アーバンアウトドア“を提唱する。展示会では、テーブルなどのアウトドアギアのリモートワーク、子どもの学習机での使用など、家族連れからの声も増えているという。また、同時に本社に隣接するキャンプ場は、今後敷地を従来の5万坪から15万坪へと拡大、ユーザーとのイベントなども行い、アウトドアユーザーとの親交も深める予定だ。
前述の焚火台は2021年、GOOD DESIGN AWARDのグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受賞している。これは、長年にわたりスタンダードであり続ける力を持ったデザインを顕彰する賞である、焚火台が発売されたのは1996年、30年以上前に発売した商品にも関わらず、高い評価を受けたのは、スノーピークのモノづくりに対してのぶれない理念を象徴しているといえるだろう。モノづくりのお手本の一つとして参考にしたい。

※Qualitas Vol.16より転載

株式会社スノーピーク代表取締役社長

山井 太

1959年生まれ。新潟県三条市出身。明治大学卒業後、外資系商社勤務を経て1986年、父が創業した現在のスノーピークに入社。毎年30~60泊をキャンプで過ごすアウトドア愛好家で、ヘビーユーザーとしての経験を製品開発に生かす。2014年12月東証マザーズに上場。2015年12月一部に市場変更。2020年、代表取締役社長を娘の山井梨沙氏に譲り、代表取締役会長に就任。