【大学特集】
創造性と個性生かし
世界で活躍する人材を
滋賀大学
日本初のデータサイエンス学部を開設した滋賀大学。データサイエンスの先駆者である竹村彰通学長は「創造性と個性を発揮し、世界で活躍してほしい」と語る。
データサイエンスの可能性
滋賀大学には100年以上の歴史を持つ教育学部と経済学部、そして、2017年に新設されたデータサイエンス学部の3学部があります。教育学部は大津キャンパスに位置し、滋賀県師範学校として創設されました。経済学部は彦根高等商業学校として創設され、昨年でちょうど100周年を迎えました。彦根高等商業学校の講堂は建築から100年近くたっており、当時の典型的な建築例であることから、国の登録有形文化財に指定されています。2017年、彦根キャンパスに設置されたデータサイエンス学部は、企業連携PBL(課題解決型授業)で実践力が鍛えられ、卒業生の就職率が高いことが特徴です。
また、部活では、琵琶湖に近い環境を生かしたヨット部やボート部などが盛んです。彦根城などの伝統的な建造物や琵琶湖などの自然に囲まれたキャンパスで学べる環境が整っており、文武両道が校風です。
データサイエンスは10年ほど前からようやく日本でも注目されるようになってきた分野で、海外ではデータサイエンスを専門に学ぶ大学が既にありましたが、この分野では日本は遅れていました。日本初のデータサイエンス学部が創設されたことによって、徐々に日本にもデータサイエンスが浸透していったと感じています。また、新しくデータサイエンス学部を作りたいという大学関係者にとってのロールモデルとして、一つの指標になれたと感じております。
データサイエンス学部では、民間企業の協力を得て、学生が実際にデータを使いこなす教育を実現しています。日本の製造業では数字やデータよりも、経験と勘という感覚的な部分で良い商品を作り出している傾向にありますが、それは現場の方が持っているスキルや技術が高いため可能で、そこにデータサイエンスを加えれば、感覚的な部分を明確にすることができます。データを用いて数字で判断することが求められるため、技術職の即戦力として採用をしてくれる企業も多いのだと考えております。
地方国立大学のロールモデルに
私は、東京芸術大学のピアノ科に進学しましたが、アカデミックな学問のほうが向いているように感じたため、予備校に入って1年間勉強し、東京大学に入学しました。経済学を勉強していましたが、自分はあまり経済学に向いていないと思い、自分と相性の良かった統計学を勉強し始めました。また、就職するよりアカデミックな領域の方が適性があったため、そのまま研究者の道に進みました。
滋賀大学の学長になり、日本で初めてデータサイエンス学部を新設した経験を踏まえて、地方国立大学のロールモデルになっていきたいと思っています。また、データサイエンス学部だけでなく、教育学部、経済学部のこの3学部でシナジーを生み、新しい価値を創造して、地域創生に貢献していけたら嬉しいです。
滋賀の人は東京の人と比べてのんびりしているように感じられるかもしれませんが、昔は近江商人のように他国を舞台に商いを行っていた人も多くいました。このように、地方から世界で活躍する人を輩出することによって日本を活性化していきたいと考えております。「湖国から世界へ」というキャッチコピーのもと、今後も発展させていきたいです。
日本も創造性と個性を大事にしていかなければならない時代だと感じております。変化が激しく主体性が求められている社会だからこそ、言われたことだけをこなすだけでなく、自分で決めて自分で創造していってほしいです。今までの世代と現在は違いますが、かつての近江商人のスピリッツを引き継ぎ、創造性と個性を発揮して活躍していただきたいです。
滋賀大学竹村 彰通
竹村 彰通
1952年、東京都出身。東京大学経済学部経済学科卒業後、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了、米スタンフォード大学統計学部博士課程を修了。同大学客員助教授、東京大教授などを経て、2015年滋賀大学データサイエンス教育研究推進室長。2017年、データサイエンス学部長。2022年から現職
https://www.shiga-u.ac.jp/