独自の感染症対策で
コロナ禍も訪問看護

株式会社シャーンティ

訪問看護の事業所を運営するシャーンティは、医療崩壊が問題となった新型コロナウイルスの感染拡大時にも訪問看護を続けながら、新型コロナに対応した訪問看護のシステムを立ち上げた。「救える命があるならやるべき」と語る龍田章一代表に思いを聞いた。

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ブレない理念「全て手を差し伸べる」

龍田代表が起業したのは、神戸市議選に落選したことがきっかけだった。「落選して4年間、何をしようかと考えた時、高齢化社会が進む中で、高齢者や障害者が住みやすくなるようなサービスを作る側に回ろうと思った。地元の人を雇用して、神戸市の税収を増やし、地元を活性化させることを一番に考えました。そこで、医療サービスが少ない現状に気付き、『高齢者や障害者が住みたいところに住むにはどうすればいいか』ということから訪問看護に行き着きました」と語る。

 創業当時から決してブレない信念がある。「困っている人がいて、自分たちにできることがあるのなら、全て手を差し伸べる」ということだ。「コロナ禍になって、新型コロナ患者を対応するかどうかは、正直、迷った瞬間もありました。しかし、我々が活動することによって救える命があるならやるべき。それが国家資格保有者の責務だと思います」と話す。

自分の身はもちろん、患者の感染症対策にも細心の注意が求められるハードな現場で働く従業員は、会社にとって何よりも大切な存在だ。「結局、会社なんて一人じゃ何もできない。そこに働く人がいて、その人たちがいろんなところで活動し、営業してくれるからこそ運営できる。『人材』ではなく『人財』として、材料ではなく宝として考える。だからこそ、従業員のケアは徹底しています。自分たちの生活の土台がしっかりしていないと、患者さんに安心感を与えるサービスは提供できません。緊張感が絶えず、ストレスがたまりやすい職種でもありますから、所内の雰囲気から精神的なフォローに至るまで、できるかぎりのことはしています。福利厚生についても、会社の賠償保険も労災とは別に民間の保険に入っていますし、生命保険も会社で掛けていたり、あとは子供の学校行事には必ず参加するという決まりもあります。離職率は高い業界ですが、うちはかなり低い」と胸を張る。

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「より住みやすく」するための業界変革

コロナ禍で医療崩壊が問題となり、現場は厳しい対応が迫られる中、「龍田モデル」といわれるシステムを組み込んだ独自の地域包括ケアシステムを考案した。「医者もいなければ薬もない、酸素も点滴も、何もできない状態で、悪くなっていくのを見ているだけという状況でした。それをどうにかしたいと思って、音声配信SNSで話していたら、宝塚市の医師に『医師がやらなければいけないことは協力をする。薬の処方ならできる。酸素も手配するから、とことんやれ』といわれた。それをきっかけに新型コロナ対策の特殊チームを作って、それが医療従事者や介護従事者、栄養士、地域の飲食店、訪問看護事業所が連携するモデルへと発展していった」と明かす。

試行錯誤で作り上げた独自の感染症対策に取り組むなど、業界変革を目指す。「より住みやすくするために、この業界を変えたい。介護だけでなく終末医療でも、人が足りないだけで医療機関も介護事業者も患者さえもあきらめていたことが多いのですが、潜在看護師の復職支援として働いてもらうことで人不足を解消できたら、あきらめなくてよくなりますし、看護師にとって現場復帰のハードルも下げられる」と意気込む。

「何とかして現状を変えようという思いが常にあって、それが原動力となっています。介護業界は年々需要が高くなり、10年後は非常に厳しい時代になってくる。さまざまな課題が出てきている中で、一般社団法人日本訪問診療・看護協会を作るなど、さまざまな事業を展開していきながら、対策を講じていきたい」と語る。龍田代表の社会をより良く、より住みやすくするための挑戦は続く。

株式会社シャーンティ代表取締役

龍田章一

1985年、兵庫県出身。2011年に近畿医療福祉大学を卒業後、社会福祉法人博由社障害者支援施設博由園、株式会社誠を経て、神戸市議選に立候補するも落選。2016年8月に株式会社シャーンティを設立。2022年1月に一般社団法人日本訪問診療・看護協会を設立し、代表理事に就任。

https://sha-nty.com/