キャリア教育支援が
地方創生のカギ
SDGs products株式会社
鹿児島を拠点に自治体や官公庁と連携し、デジタル分野のキャリア教育支援を行っているSDGs products株式会社。「持続可能な未来を若者とともに」をキャッチフレーズに、デジタルに強い人材育成から地域貢献を目指す中島寛之代表に話を聞いた。
キャリア教育を地域活性化に落とし込む
中島代表は2020年、「急速なデジタル化によって可視化された、地方のデジタル遅れを何とかしたい」という思いで、鹿児島県に同社を設立した。「都市部に比べると、Wi-Fiが通っていないエリアもまだ多く、高齢化、過疎化が進んでいる地域もあり、そういったところだとデジタルコンテンツに触れる機会も少なく、ITに興味がある若者は県外に出てしまう」と現状を語る。広告代理店や制作会社でデジタルコンテンツを活用した企画提案をしていた経験から、デジタル領域の学びを深めていたこともあり、「自分のデジタルスキルを役立てなから、地域の課題解決を目指したい」と、社名に「SDGs(持続可能な開発目標)」を入れた。
現在、県内の高校で嘱託外部講師を行うなど、「デジタル」をキーワードに地域に根差したキャリア教育支援を展開。SDGsの17の目標の一つ「教育」分野に注力する。「鹿児島県は観光で成り立っている部分も多いため、学生たちにはデジタルを活用したおもてなしを考えてもらったり、商品開発のアイデアを出してもらったりしています。例えば、YouTubeやSNSを効果的に使う、までは学生でも考えつくパターンですが、そのために必要なアルゴリズムを解析するといったように、実践に重きを置いた内容を提供しています」と、最終的にはその知識やスキルが生徒自身のキャリアアップにつながるようなプログラムを提供している。中島代表は「地方の企業は、デジタルのスキルを持っている人材が少ない。生徒自身がそれを武器にすることはもちろん、地域の人材不足を補って、活性化にもつながる」と力を込める。
高校や大学でのキャリア教育支援のほか、「まず触れてみないと想像力は身につかない。こんなに技術は進歩していたんだ、それだったら今抱えている課題も解決できるかも、という考える力を身につけ、ロジックが組み立てられるようになるのが大事」と、若者が最新鋭のデジタル技術に触れる機会として、地域のお祭りなどでのデジタル施策も積極的にプロデュースしている。また、そうした場を教育支援のプログラムで学んだことをアウトプットする場としても活用している。「23年12月からの『鹿児島イルミナージュ』というイルミネーションイベントでは、地域の方々や学生たち、合わせて200人のボランティアの参加があり、全員でイベントを創り上げた。また、室町時代から続く鹿児島神宮の神事『初午祭』の来場者を増やすため、学生たちとともにアイデアを出し合い、『初午Fes』を同時開催し、生まれ変わらせました。学生たち自身がまちづくりに関われるような、地域活性化の取り組みも行っています」と語る。
鹿児島発のデジタルマーケティング企業として
古きよきものを大事にしつつ、デジタル分野で若者を巻き込んだ戦略を立てることで、地域貢献をかなえている中島代表は、今後も「SDGsをテーマにした提案を続けていきたい」と意気込む。「SDGsも教育が根幹にあると考えています。SDGsって何?とか、環境問題や人権問題でしょうとか、それぞれの課題に対してどう行動を起こしていいか分からない人が多いので、それを教えていく必要があると思っています。まずは理解してもらうことから始め、そのうえで課題を解決できるよう、自治体などのクライアントに寄り添っていきたい」と話す。
また、教え育てる点はデジタルの分野も同じだとも指摘。「今、デジタルを活用して何ができるのか、知らない企業の方も少なくありません。我々は移り変わりの激しい情報技術の動向を見ながら、それぞれの企業が必要とする情報システムをDX化するなどITアーキテクトも得意としています」と胸を張る。
アイトラッキングを活用したデジタルマーケティングやオンラインで全国の学生を支援する「舞空キャンパス」プロジェクトなど、幅広く事業を展開。中島代表は「地方だから、という言い訳をしたくない」といい、「デジタルテクノロジーの発展により、将来的にはさらに地域格差がなくなっていくでしょう。実際、デジタルマーケティングの分野は、全国の企業にサービスを提供できるような環境が整いつつあり、どこでも行えるのが最大の利点になっています。鹿児島発のマーケティング企業として、より成長して、高みを目指していきたい」と力を込める。
SDGs products株式会社代表取締役
中島寛之
1983年、沖縄県出身。高校卒業後、音楽専門学校に進学。大阪で音楽講師兼アーティストとして活動。その後、広告代理店や制作会社での企画プランニングを経て、2020年、鹿児島市でSDGs products株式会社を設立。
https://www.sdgs-products.com/