良質な学びを提供し
療法士教育を変える

Rehatech Links株式会社

病気やケガなどで、身体を思うように動かせない人のリハビリテーションを担う理学療法士や作業療法士に向けたオンラインの教育プラットフォーム「リハデミー」。これまでも高く評価されていたが、情報の正確性を高め、より良質なコンテンツを提供しようと、2022年7月に大規模なリニューアルが予定されている。「リハビリテーションに関わる全ての人が幸せになる社会」を目指して、同サービスを運営する「Rehatech Links」の大北潤代表に思いを聞いた。

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地域格差なく、誰もがスマートに学べる教育環境を

理学療法士や作業療法士は、国家資格が必要な専門職だが、資格取得後、すぐに患者を受け持ちリハビリテーションを行うことが多いのが実情だ。そのため臨床現場で苦労する療法士も多く、大北代表もその一人だったという。「学校では国家資格を取るための勉強が中心で、臨床現場で使える知識や実践できるようなものは少ない。研修制度が整っているわけでもなく、目の前の患者に対してどうリハビリテーションを行えばいいのか、とても苦労しました。自ら勉強しようとも、オンラインで学習できるサービスもなく、セミナーを受けるにも都市部に行かなければ受講できない。情報の地域格差をはじめ、さまざまな弊害があると感じたことで、オンライン教育サービスを思い立ちました」と語る。

自身がバイクの事故に遭い患者側になったこともきっかけになったという。
「いざ患者側としてリハビリテーションを受ける際、『この担当の先生で大丈夫かな?』『自分の身体は良くなるのかな?』など、さまざまな思いが交差し、安心して身を委ねることができず、不信感が募っていきました。同じ療法士だからこそ感じる思いかもしれませんが、自分はモヤモヤしているのに、ほかの患者たちは『ありがとう』と、満足してリハビリテーションを受けている。そこに違和感を覚えた」と振り返る。

当事者としての思いから、全国どこでも同じような形で学べるオンライン教育プラットフォームを立ち上げて、「理学療法士の教育を変えたい」と鳥取から上京した大北代表だが、奨学金含め、自身で抱えた借金の返済と、ITサービスの基盤作りという面からウェブ制作や広告のプロモーション会社を設立するなどの苦労もあった。そうした経緯を経て、「Rehatech Links」を設立、療法士の学習機会を増やし、どこの誰に身体をみてもらっても、患者が安心できるようにするため、「リハデミー」をリリースした。大北代表は「今も、『業界を変えたい』という上京したときの自分の言葉を実現したいという気持ちを強く持っています」と話す。

02

患者に必要なものを療法士に届けるコンテンツ作り

リリース当初から今までにないサービスとして、登録者数も好調だった「リハデミー」だったが、運用を続ける中で大北代表は“教育”という点で疑問を持つようになった。「ビジネス的には順調でしたが、さまざまなコンテンツがそろっていく中で、自分がやっていることは本当に教育なのか、と思うようになってきました。サービスは売れるし、療法士も満足してくれている。しかし、その情報が患者のためになっているのかと考えたとき、療法士が求めているものを提供しているだけだった。売れそうなテーマづくりをして、講義内容は講師任せで、会社としてサービスをしている意味を感じませんでした」と明かす。

「療法士が求めているものを提供するのではなく、患者が必要としているものをどう療法士に届けるか。その思いから全てのコンテンツ作りの工程を変えていきました」と大幅なリニューアルに着手した。当初の目的である情報の地域格差をなくすことはもちろん、SNSなどで情報過多になっている現代社会の中で、正確な知識を身に付けるために、正確性を担保した情報をコンテンツ化することにこだわった。

大北代表は「医療の分野は情報の質として、正確性、鮮度、そして深度が重要です。専門家が監修したアカデミックなコンテンツのみを配信し、常に新しい情報を提供できるように定期的なアップデートも行っていきます。リニューアル後は実際に講師たちとディスカッションできるようなイベントも設けていきますので、受動的な学習から能動的に学習してもらえるようにサポートしていきます。さらに、個々の学習データを管理して企業側からコンテンツをレコメンドして個々に最適化した学習提供ができる教育システムも目指しています」という。

自分が臨床現場にいた当時を振り返り、「学びが足りていないことに気づかずにいる療法士にもアプローチしたい」という大北代表。「何となくリハビリテーションを行ってしまっている療法士も多いと思います。『リハデミー』は、療法士が学びを得ることで視点を増やし、それを患者に還元できるシステムです。教育の入り口としてはもちろんですが、ツールとして活用して、ステップアップにつなげてほしい。それが患者へのより良い医療提供につながるはずです。リハビリテーションに関わる全てが豊かに、幸せになることを目指すのはもちろんですが、今後は健康全般に対して僕らができることは何か。そういったことにもコミットして取り組んでいきたい」と語る。

当事者としての思いで始まった大北代表の挑戦。転職支援の人材プラットフォームを手がける企業と協業を始めるなど、業界の外へも広がっていくようだ。

Rehatech Links株式会社代表取締役

大北 潤

1990年、鳥取県出身。2012年、玉野総合医療専門学校理学療法学科卒業後、医療法人天和会松田病院に入職。2014年、リハビリテーション業界の教育における地域格差を感じ、起業するために上京。2015年、ウェブ制作・広告プロモーション会社を設立。2016年、Rehatech Links株式会社を設立し、オンラインの教育プラットフォーム「リハデミー」を提供。

https://rehatech-links.com/