【大学特集】
「総合知」で新たな価値を
大阪公立大学
2022年4月、大阪市立大学と大阪府立大学が統合して誕生した大阪公立大学。辰巳砂昌弘学長は「複雑な現代の社会課題を解決するためにさまざまな分野の知を合わせて新たな価値を見出していく『総合知』を大切にしたい」と語る。
2大学統合がもたらす多様性と創造性
大阪公立大学は、1学域11学部と大学院15研究科というフルラインナップの公立総合大学です。それぞれの大学が約140年という歴史の中で築いてきた強みは十分にありましたが、互いの強みを合わせて、国内外で更なる飛躍をするため統合しました。
学問分野では、幅広い領域を網羅できる教育研究機関になりました。大学で何を学ぶのかはっきり決めずに入学しても、幅広い専門分野を学ぶことができるので、興味関心のある道を見つけ、極めることができます。
本学では「総合知」を大切にすることをうたっています。「総合知」とは、それぞれの学問分野の「専門知」を重視しつつ、複雑な現代の社会課題を解決するためにさまざまな分野の知を合わせて新たな価値を見出していく考え方です。例えば、全1年次生必修の「初年次ゼミナール」を開講しています。200以上のテーマがあり、それらを希望した全学部の学生が混在したゼミが形成され、一つのテーマに対し、専門分野が異なる多様な学生が、多様な議論を交わしています。他分野からの異なる観点を互いに尊重・理解し、新たな発想を生み出す経験を通して、社会に出てから必要とされる力を養います。
また、部活やサークルでは、文化の異なる旧2大学のクラブやサークルを統合して、共に新たな活動を始めているところもあります。例えば、硬式野球部では統合したことでさらなる躍進を遂げ、2023年には初の「全日本大学野球選手権大会」にも出場しました。
新しい学びに主体的に取り組む
私は小さい頃から理科や化学が好きで、一般の企業等で技術者・研究者として働くことを考えていて、高等教育の世界に進もうとは全く考えていませんでした。大学院で修士の学位を得ようかという頃、大学教員にならないかと勧められ、非常に迷い、そしてとても勇気のいる決断でしたが、今の道を選びました。
大学は、学びをしっかりと深めていける場であると思っています。単なる知識の獲得だけでなく、自分の可能性を広げ成長し、社会人として将来活躍できる力を養う場でもあります。私自身も大学時代は自分の好きな研究や勉強ができたので、振り返ってみると充実した時間だったと思います。
大学生に求められる最も基本的な姿勢は、いつでも新しい学びに主体的に取り組むことです。私は学長として、本学が育てたい学生像として三つのことを挙げています。それは「いつでも新しい学びに取り組める人」「多様な価値観の存在を尊重しあえる人」「困難な課題にチャレンジしていく人」です。大学は知識の宝庫であり、その豊富な知識を吸収し、自分なりに理解し、実践につなげることが大切です。
授業だけでなく、研究、アルバイト、留学などさまざまな経験を通して、自分を広く深く育てることができます。また、「ボランティア・市民活動センター」など教育・研究・課外活動以外のさまざまなコミュニティーもあり、学内だけでなく学外の人々とのつながりも多いのが本学の特徴です。
本学での大学生活を通して培ったこれらの経験と姿勢は、きっと社会で生きてくると思うので、果敢に取り組んでほしいですね。
大阪公立大学学長
辰巳砂昌弘
1955年、大阪府生まれ。1980年、大阪大学大学院工学研究科応用化学専攻博士前期課程修了後、大阪府立大学工学部助手。専門は無機材料化学、固体イオニクス、ガラス科学。同大学教授、大学院工学研究科長などを経て2019年4月より、同大学 学長。2022年4月から現職。
https://www.omu.ac.jp/