【大学特集】
自分事とし考える人材の育成を

岡山大学

岡山大学の那須保友学長は岡山大学病院で医師として勤めた後、第15代学長に就任した。学長は「物事をすべて自分事としてとらえ、考えて行動できる人になってほしい」と語る。

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文理融合型研究への取り組み

本学は文理融合型の研究に取り組んでいます。考古学研究では、古墳の発掘と解析において、伝統的な方法にとどまらず、科学的手法も取り入れています。古墳を解析する新たな学問領域をヨーロッパと協力して研究しており、古墳が発掘される山で、宇宙からの粒子を抽出し、新たな構造物を発見するというエジプトのピラミッドの発掘でも使用される技術を使ったり、昔の人の歯石を科学的手法で調査し、古代の食事や病気についての情報を解明したり、文系分野の研究での科学的解明が盛んに行われています。

また、部活も盛んで、中でもデータサイエンス部は地方創生に貢献しています。現在約100人が参加しており、学部に関係なくデータを扱うことに興味がある学生たちが集まっています。さまざまなアプリケーションの作成やデータの活用、地元企業のDX化支援など地方活性化につながっています。学生が社会とつながりを持てるという点で人気です。

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「利他の精神」で地域から愛される大学に

今までの経験から「利他の精神」を大切にすることが大事だと思っています。岡山大学病院の医師として社会人をスタートし、医師としての経験を積みながら、徐々に部下を教えていく役割になっていきました。最初は教育者になるつもりはなかったのですが、病院での経験を通じて次世代への指導を担うようになり、手術にとどまらず学問的な知識も共有し、次第に「次の世代を作ること」が大きなミッションとなっていきました。

 医師の時は「人のために尽くす」「患者とその家族の事を考える」という考え方を大切に毎日仕事をしてきました。こうした考えもあって、ステークホルダーにこの病院で治療を受けてよかったと思ってもらえるように努めてきました。今まではステークホルダーが主に患者でしたが、学長になると学生や学生の家族、地域の方々と増えていきました。医師の時と同じで、大学でもステークホルダーの方にこの大学を選んで良かったと思ってもらえるようにしたいという気持ちで、いい大学作りに励んでいます。

 学生には「物事をすべて自分事としてとらえ、考えて行動できる人」になってもらいたい。大学1年生の頃は、自他を分けて考える人が多い傾向にあります。しかし、何事も自分事として考えることが大事です。例えば、プラスチック問題を自分事の環境問題として考えていれば、ペットボトルのポイ捨てはしません。自分、家族、友達、地域、国、世界は全てつながっています。それを理解した上で、主体性を持ち、何事も自分事ととらえて物事に向き合っていってほしい。

主体性を持つ学生の輩出も大学のミッションではありますが、地域から愛される大学にしたいという思いがあります。本学は昔から地域と共に歩んできました。大学創設に当たっては「地元に大学を」という地域の方の思いから、多くの方々から寄付をいただき、今では10学部・1プログラムを有する大学になりました。地元企業に就職する学生も多く、地元の方からは「岡大(オカダイ)」と呼ばれ、親しまれています。今後は、20代のための教育機関ではなく、さまざまな年代の方が学べる大学にしたい。最終的に自分の孫と共に通えるような教育の場として、岡山の人たちに愛されるような大学にしたいと思います。

岡山大学学長

那須 保友

1957年生まれ。愛媛県松山市出身。岡山大学医学部医学科卒業後、大学院医学研究科を修了。岡山大学大学院医歯学総合研究科教授、理事を経て岡山大学学長に就任。

https://www.okayama-u.ac.jp/