都市部と遜色ない
医療の提供を目指す
のぶはらクリニック
京都府京丹後市で、耳鼻咽喉科、皮膚科、美容皮膚科の診療を行うのぶはらクリニック。「地方でも都市部同様の医療を提供するクリニックとして、地域のニーズに応えたい」と語る信原健二院長に聞いた。
クリニックの限界に挑戦
耳鼻咽喉科・頭頸(とうけい)部の外科医として数多くの臨床経験を持つ信原院長は2021年8月、京丹後市にのぶはらクリニックを開院した。10年間勤務した京都府立医科大学附属北部医療センターでの診療経験から、京都府北部エリアでの耳鼻咽喉科のかかりつけ医の必要性を強く感じていた。「このエリアには、人口10万人の医療圏内に耳鼻咽喉科のクリニックがなく、北部医療センターは、簡単な処置で済む症状から大きな手術、看取りまでを一手に引き受けていました。やはり病院の機能として、(日常的な疾病を対象とする)一次医療から、(専門性の高い医療や入院医療の)二次医療、(緊急性や専門性の高い医療を対象とする)三次医療が都市部と同様に区分されるべきだと思い、自分が役割を少しでも担うことができればと、開業を決意しました」と振り返る。
一般的な耳鼻咽喉科の診療に加え、慢性副鼻腔炎(ちくのう症)やアレルギー性鼻炎、慢性中耳炎の日帰り手術、睡眠時無呼吸症候群の治療、補聴器相談などにも対応する。
「クリニックでできるだろうことは、できるように体制を整えています。本来なら専門外で診られないと門前払いされることをできる限り少なくしたいと思っています。もちろん難しい治療は専門医などへ紹介しますが治療の選択肢を増やしたい」と語る。
皮膚科と美容皮膚科も設置して、手術跡を目立たないようにするなどの形成外科的な要素を取り入れるなど、肌に関しては治すだけでなくより美しく保てるためのサポートも積極的に行っている。信原院長は「クリニックでできることの限界に挑戦したいけど、既に限界に近づいているような気がしています」と苦笑しながら、「開業してしまうと自分のやり方に固執してしまい、新しいことを取り入れることが後回しになりがちですが、積極的にも学会に参加するなどして、新しい治療法やAIの活用などに取り組みたい」と意欲を見せる。
地域医療は日本医療の先端
地方でも都市部と遜色のない医療を提供したいという思いが原点だという信原院長は地方医療の難しさについて、「都市部では病院や大学の研究機関、専門ごとにクリニックがあり、患者は自分が選択できる環境がある。医師も、より専門領域に特化することに価値があると考えています。でも地方では一つのクリニックで全てを賄わないと需要に追い付いていかない部分もあり、必然的にオールマイティーにならざるを得ない。専門性の高い医師から見ると、“何でも屋”だけど何もできない、という評価を受けることもある。だからこそ、それぞれの専門医に追い付けるような努力をしないといけないし、さまざまな疾患に対応できるサポート体制を整えていく必要がある」と説く。
都市部でも人口減少や高齢化が進む中、「地方での医療は今後の日本医療の先端ではないかと考えると、地方医療の重要性は高い。専門性を持つことと同時に、幅広い疾患や個々の悩みにいかに最後まで向き合うことができるかを問われている。医療機関というのは、必ずしも病気を治すこと、治す手助けをするだけではなく、未病など悩みを聞いてアドバイスするのも仕事の一つではないか」と力を込める。
免許返納や一人暮らしで通院が難しい高齢者に向けて、一定額でエリア内乗り放題の交通サービスを導入するなど、診療だけでなくクリニックを取り巻く環境についても心を砕く。「高齢化が進む患者が気軽に受診できる環境提供や高次医療へのシームレスな橋渡しなどはもちろん、健康寿命の高い地域の魅力の発信をしていきたい。周りに感謝しながら、体力が衰えるまで、楽しみながら役割を果たしていきたい」と歩みを続ける。
のぶはらクリニック院長
信原健二
1966年、京都府出身。福井医科大学医学部卒業。耳鼻咽喉科・頭頸部外科医として、京都市立病院や京都府立医科大学附属北部医療センターなど各地の病院に勤務。二十数年間にわたる数多くの臨床経験を経て、2021年8月に京丹後市で耳鼻咽喉科、皮膚科、美容皮膚科クリニックを開院。
https://nobuhara-clinic.com/