企業社会に人間性を
新時代の組織づくり

株式会社ビヨンド

トヨタや楽天など日本をリードする企業が導入を進めるウェルビーイング経営。社員の幸福感を高めることで、組織の健やかな発展を促す経営手法だが、人材・組織開発コンサルティングファーム「ビヨンド」は、10年以上前から人間性を各企業組織の中心に据えるべく尽力してきた。仁藤和良代表に、時代の潮流に合った組織づくりについて聞いた。

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変化に気づき始めた企業に向けた研修を

ビヨンドには上場企業からベンチャー企業まで、日々さまざまな依頼が舞い込んでくる。それは「従来の組織の在り方、人材教育のままではこの先やっていけないのではないか」という危機感からだ。ある総合商社ではこれまで、新入社員をいくつかのグループに分けて企画を発表させ、その企画に対して講師が批評を行う形で新人研修を進めてきたが、最近の新人は企画にダメ出しをもらっても納得いかない様子を見せたり、反論したりするようになっており、人事担当者が悩んでいたという。

仁藤代表はこの状況に対して、「違うと思ったら違うと言える新入社員こそが健全だと思う」といい、「たとえ新入社員であっても自分の意見を率直に発言できる組織こそ、社員は安心して働くことができ、高め合える関係が築けます。反論できるようなとがった人こそ総合商社で活躍できる。講師は任された役割ゆえに企画のあらを見つけようとされますが、実は新入社員からは、その意図が見え見えだったりするものです。新入社員はそれに服従する必要はない。感じたことを率直に場に出すところから対話が生まれる。むしろ変わるべきは企画側」と指摘する。

仁藤代表は、従来社員に会社の意図を押し付けることを是とする企業が多かったが、世の中の変化に気付き始めている企業にとっては、ビヨンドが提供しているサービスが非常にフィットするという。

ビヨンドといわゆる「研修会社」との違いは、顧客のミッションが達成できるように「目的・コミュニケーション設計」を行い、目的実現のための「一皮むける研修プログラム・モジュール」を組み合わせて「手段」として提供している点だ。

仁藤代表は「どんなに努力をしても100メートルを9秒で走ったり、身長をぐんぐん伸ばしたりするのは難しい。人は、『何かができない自分』を『できる』ようにするために必死で努力することで自信がつくと思いがちだが、それは不完全な自分を認めずに、自分で自分にダメ出しをし続けることになる。これが続くと、とても苦しい。完全無欠な自分を目指すのではなく、不完全な自分を認めることで本当の自信が生まれます。そもそも私たちはみんな生まれながらにしてポンコツ。むしろそれだからこそ人間。そんな自分をさらけ出して、他者と欠点を補い合うことでよい仕事が生まれ、社員の幸福感につながっていく」と言う。

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人間性の重視に世の中が変化する

仁藤代表は「特に2000年代までの日本の企業は、行き過ぎた成果主義の中で限界を迎えていた。中には、社員は夜中まで働くのが美徳とされて、うつ病や椎間板ヘルニアを患っても働き続けることがよしとされるような職場もあった。その風潮が社員を壊し、会社組織の限界を招いてきた」と訴える。「組織の中で人間が機械化する方向に進んでいました。私自身、成果を追い求めることはある部分において必要なことだとは思いながらも、デスクの隣の人が今何の仕事をしているのか分からない、お互いの関心事も分からない環境はどうなのかと疑問を抱くことがありました」と振り返る。

「企業が抱えるこの閉塞感を打破するには、企業社会に人間性を取り戻さなければならない」と信じて仁藤代表は2013年にビヨンドを設立した。それから10年。変化を願う経営者や人事担当者の思いを受け止めて、時代の潮流に合った組織づくりをサポートしてきた。

「今は多くの企業から依頼を受け、既存メンバーではなかなか手が足りていない状況です。今後は、人事に長年携わってきて独立したい方や、個人事業として講師をしてきて、もっと学びを得たいという方に向けて人材開発コンサルタントを養成する事業を立ち上げたいと思っています。私も彼らから学びを得たいですし、業界の底上げも図っていきたい」と前を向く。

仁藤代表はこれからの10年を、「まだ個性の多様な人たちが、工場の検品テストに一律にさらされて、ふるい落とされるような社会状況があると思う。ただ、コロナ禍をきっかけに人とのつながり、自然や命を大切にしていこうという意識が明確になり、人間性の重視に世の中が変化しているのも事実です。学校や企業には、まだ人間を機械として扱おうとするシステムが残っていますが、それも技術の進化などが状況を変えていくと思う」と予測する。「だからこそ、例え新入社員でも意見を率直に発言できる組織、今まで埋もれていた人材も活躍できるような組織作りが重要。それこそが人間が共に働くということの意味や可能性を最大化することになるので、そんな組織作りに貢献していきたい」と力を込めた。

株式会社ビヨンド代表取締役社長

仁藤和良

1976年生まれ、千葉県出身。早稲田大学法学部卒。アクセンチュア、リクルートマネジメントソリューションズを経て、2013年に人材・組織開発コンサルティングファーム、株式会社ビヨンドを設立。「自分を生きる人たちによる、幸せの共創の世界を創る」をミッションに、「一皮むける研修プログラム」を提供している。

http://b4d.co.jp/