幻の徳山唐辛子使い
岐阜特産品を世界に

株式会社ナイス

日本三大清流の一つ長良川が流れ、自然豊かな岐阜県瑞穂市を拠点に、幻の地元野菜・徳山唐辛子を使用した七味唐辛子の製造販売と企業の経営支援業務の二本柱で展開しているナイス。河尻貴晶代表取締役に、事業に懸ける思いを聞いた。

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ダムに消えた村の“伝説の野菜”を復活

河尻代表が七味唐辛子の製造販売をスタートしたのは「岐阜県には魅力的な野菜や特産品があるのに、あまり世の中に知られていない」と思ったことが原点だ。「飛騨市の飛騨牛は全国でも有名ですが、生まれ育った故郷の岐阜の他の地域からも、全国へと届ける名産品を作りたい」と立ち上がった。

約20年間、企業の経営支援を行ってきた河尻代表は、経営コンサルタントとして、地域に根ざす企業のさまざまな相談を受けてきた。そんな中、地元の野菜・徳山唐辛子の展開について相談された。

徳山唐辛子は、2008年に完成した徳山ダムに沈んだ徳山村(現・揖斐川町)で栽培されていた伝統野菜だ。1987年に廃村された村と共に消えてしまったと思われていたが、そのから辛さとうまみにほれ込んだ人の手によって、種子が保存され、栽培が続けられてきた。生育環境が特殊で、現在は本巣市根尾能郷地区でのみ栽培されている。市販の唐辛子の約1.5倍の辛さで、旨味成分であるグルタミン酸が豊富に含まれており、豊潤な香りが特長だ。

河尻代表は「この希少な徳山唐辛子を市場に流通させたいと相談を受け、新しい付加価値を加えて、人の目に留まるようにすれば、きっと岐阜県を代表する商品になると確信した」と、徳山唐辛子の魅力を最大限に引き出すため、七味唐辛子に着目した。

「七味は、唐辛子を中心に薬味や香辛料を調合した日本古来の調味料です。料理に少し辛みを足すために使うものだというイメージが強いかもしれませんが、本来は辛みと共に香りや風味を楽しむものです。徳山唐辛子であれば、そうした香りや風味を存分に楽しめる七味唐辛子を実現できると考え、商品開発をスタートしました」と語る。

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材料を厳選、工程にもこだわる

河尻代表は「七味唐辛子の香りを左右するのは『陳皮』と呼ばれるミカンの皮です。ミカンの実をまるごと使用すると、甘味があるためダマになり、パラパラにならないので、低温乾燥をして、皮だけではなく実も粉状にできました。実の甘さや豊富なビタミンを丸ごと入れられるので、風味を最大限に楽しめるようになったのです。使用するミカンも30~40種類を試して、一番合うものを選びました」と開発の努力を語る。ミカンの香りや甘味、苦味をコントロールするために、種を一粒一粒手作業で取り除き、乾燥加工、その全てを手作業で行うことを徹底している。

国産の材料を厳選し、工程にこだわり抜いて誕生した七味唐辛子は、定番の「赤橙」をはじめ、ゆずの豊潤な香りや美しい色を堪能できる「雄黄」、岐南町の伝統野菜・徳田ねぎの風味と甘味が楽しめる「萌葱」など、地域の豊かな自然の中で育まれた農産物をベースに全13種類が作られている。従来の七味とは違う存在感を放ち、その風味と香りを求めるファンは全国に広がっているという。

地域に昔からあった魅力ある農産物にスポットを当て、岐阜から全国へと展開する商品を生み出すことに成功した河尻代表は、「戦略からマーケティングまで、きちんと確立された道筋でビジネスをすれば、食品を扱った経験がなくても事業を成長させていくことができる。知識を身に付け、向上心があれば必ず道を切り開ける。階段を一段一段着実に上っていくことで、徐々に認められていくものだと思います」と語る。

大学院でMBAを取得予定だという河尻代表は「相手に幸せになってもらうこと」を信念に、これからも地域の人や企業のサポートに注力し、海外も視野に入れた販路拡大も見据えている。「地域の企業をサポートしながら、県や同業者が一緒になって岐阜県を盛り上げていく仕事をしていきたい。徳山唐辛子を使用した七味唐辛子のおいしさを世界中に届けていきたい」と力を込めた。

株式会社ナイス代表取締役

河尻貴晶

岐阜県出身。大学卒業後、株式会社十六銀行、株式会社マネジメントブレーンを経て、2020年、株式会社ナイスを創業。経営コンサルティング事業と、地元で採れる徳山唐辛子を使用した七味唐辛子の製造販売によって地域創生に尽力する。

https://nicenicenice.co.jp/