私らしく
ネスレらしく
ネスレ日本株式会社
1866年に創業したネスレは、スイスに本社を置く世界最大の食品飲料会社だ。「食の持つ力で現在、そしてこれからの世代のすべての人々の生活の質を高めていきます」というパーパス(存在意義)のもと、世界186ヵ国で事業を展開。ネスレ日本も1913年に創業している。そんな同社の中で社内外の広報業務を統括し、行政や地域コミュニティNPOなど、ステークホルダーとの関係構築に取り組んでいるのが執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長を務める嘉納未來氏。彼女のキャリアを振り返りながら、ネスレならではの取り組みについて聞いた。
変わらない、ネスレのパーパス
――嘉納さんはもともと、お客様相談室のオペレーターとしてネスレ日本に入社したそうですね。
当時はお客様と直接的に関わるコールセンターの現場業務に従事しながら、商品の認識を深めたり、当社のファンになっていただけるような取り組みを続けていました。相談窓口としての役割を全うするために試行錯誤の日々でしたね。
――その後、スイス本社の消費者対応部門のプロジェクトに参加されたそうですが、その経緯についても教えてください。
一般的にコールセンターでは、お客様の要件が済めば終話するというのが通例です。しかし当社では、どんな些細なことでもお客様の声を尊重し、それらを商品開発などの様々な現場で活かすことを大切な素地としてきました。単に聞くのではなく、お客様の真意を聞き出し、何かしらの形で事業に反映していくことが有意義な関係構築に繋がると考えてきたからです。
実際に当社では、そうした取り組みを一つのプログラムとして推進してきました。そうした中で実績を積んできたことが認められ、ネスレ日本の一員としてスイス本社からお声がかかったという経緯です。
しかし、国が変わってもネスレとしてのパーパスは変わりませんし、日本で対話を続けてきた私だからこそできる還元もあるのではないかと考えていました。とにかくチャレンジしてみようという思いだけでしたね。
――とはいえ、同じネスレの中でも国や文化が違うことによって、障壁などはありませんでしたか?
これはネスレの良さの一つだと思いますが、スイス本社のやり方や考え方に単に合わせるのではなく、日本の文化や良さも尊重し、お互いに良い部分を引き出していこうという進め方が社内の方針として根付いているんです。
例えばコーヒー一つとっても、国によって様々。日本人ならではの味覚や感じ方もたくさんあると思います。そうした各現地法人の特色やチャンネルを上手に生かしながらグローバルに展開していることがネスレの特徴でもあります。
――スイスから帰国後はお客様相談室長に就任し、その2年後に広報業務へ移られていますね。
当時は相談室長として、お客様の期待に応えることで頭が一杯でしたし、自分のキャリアは二の次だと思っていました(笑)。まさか自分が広報に携わることになるとは考えてもいなかったんです。ただ当時の上司からは「キャリアを決めつける必要はないし、もっと幅広い業務でチャレンジしてみてはどうか」と意見をいただき、新たなキャリアを進む決意ができました。主にメディア対応などの広報業務を中心に経験を積んでいきましたが、私としても大きなターニングポイントになりましたね。
ネスレらしい「Good」を
――広報ということで、お客様視点のみならず、ステーホルダー全般に渡る多角的な視点が必要になりますね。
さらに視点が広がったことは私自身も実感しましたし、本当に良いチャンスを与えていただいたと感じています。何より、人と関わるコミュニケーションの大切さをより痛感させられた時間でもありました。広報としてどう発信し、どんな形でメディア側の方々と調整をしながらお客様へ発信していくべきなのか。常にあらゆる視点を持ちながら対話を続けていく必要があったからです。
たくさんの方々と出会って対話をしていく立場だからこそ、もっともっと聞き上手にならなければいけないなと日々感じているところです。
――現職では、そうした多角的視点や経験を活かしながら、CSV(共通価値の創造)の強化やサステナビリティにも注力していますね。
私どものコーポレートスローガンは「Good life Good food」ですが、Goodには色々な意味が込められていると思っています。その一つとして挙げられるのが、ネスレ日本と何かしらの関わりや共通項がある方々へ、より良い暮らしを提供できたり、より良い環境を創造していくこと。その中で、単に良いものを創造していくのではなく、ネスレらしさをプラスアルファしていけたらという思いがあります。当社を通じて生活や環境の質が高まったり、次の世代にも同じように価値提供していける社会にしていくことが当社の大きな使命でもありますから。
――サステナビリティの観点で、具体的な取り組みについても教えていただけますでしょうか。
環境への配慮と一言で言っても様々なアプローチがありますが、例えばパッケージも環境に優しい資材に変えていきました。実際に当社では、2025年までに100%リサイクル・リユースできるパッケージにしていくという取り組みを推進している最中です。
また、そうした取り組みを発信し、お客様と共に環境負荷に関する問題定義や啓蒙にも役立てていく活動も続けていかなければいけません。地球環境への取り組みは我々だけで完結できることではないですから、例えば行政やリサイクル業者様などとの関係構築も必要不可欠ですし、そうした部分でも対話を続けていく必要性があると感じています。
――最後に、読者である多くのビジネスパーソンの方々に向けて、何かメッセージをいただけますでしょうか。
今後も食の持つ力を通じて、日本のお客様の期待を上回っていけるような価値提供を続けていきたいと思っています。そして多くの方々が豊かな環境の中で心も身体も元気になれるような取り組みに繋げていくことが今後のビジョンでもあります。
※Qualitas Vol.15より転載
ネスレ日本株式会社執行役員 コーポレートアフェアーズ統括部長
嘉納未來
2001年、ネスレ日本入社。2005年、スイス本社の消費者対応部門のプロジェクトに参加し、帰国後の2006年よりお客様相談室長に就任。2008年よりメディアリレーションズ室長、2015年よりエクスターナルリレーションズ部長を経て、2017年8月より現職。