【大学特集】
問題を主体的に考えられる国際人に
南山大学
愛知県名古屋市に位置する南山大学。ロバート・キサラ学長は神言修道会日本管区長、総顧問、副総会長などを歴任している。学長は「対話の重要性を学生たちに伝えたい」と語る。
他者との繋がりを重視した教育の可能性
南山大学は中部地方を含む西日本唯一のカトリック総合大学で、2021年度に創立75年を迎えました。1946年の終戦直後に、世界を舞台に活躍できる人材を育成することを目的として外国語専門学校としてスタートしました。その後、総合大学に発展した現在でも、その目的は変わることなく教育・研究活動を行っており、豊かな国際力と専門性を併せ持った人材の育成は本学の強みと考えています。
この強みを象徴するものの一つとして、2022年度に開寮したヤンセン国際寮が挙げられます。約180部屋あり、日本人学生と留学生が約半数ずつ入居しています。この寮ではダイバーシティ&インクルージョンをテーマに、多様性や文化の違いを大切にする教育プログラムを提供しています。他にも、世界中に多くの協定校があることなど、海外とのつながりが強いことも特徴といえます。留学については、いわゆる長期留学に加え、自分の専門性に沿ったプログラムを提供する短期留学も盛んです。このプログラムは、国際的な学部のみでなく、全ての学部で用意しています。
教育以外の特色としては、例えば、同じくカトリック精神に基づく教育を行っている上智大学とは、課外活動でも交流があり、毎年、「上南戦」というスポーツ対抗戦を行っています。また、ボランティア活動を行う団体が多いことも特徴の一つだと思います。近所の子どもたちの勉強のお手伝いや、ホームレスの人々のための炊き出しなどの活動を行う学生もいます。カトリックの精神が、必ずしも直接ボランティアに結び付くわけではありませんが、本学の教育モットーである「人間の尊厳のために」が示す、すべての人が生まれながらにして特別な価値を持っているという考え方が、きっかけの一つになっているのではないでしょうか。
多様な価値観を受け入れる対話の重要性
私は、小さい頃から学問が好きでした。来日してからは特に日本の宗教について興味を持ったため、宗教学という学問を選択しました。また、南山大学での最初の仕事は南山宗教文化研究所で日本の宗教を研究することでしたので、宗教に関する教育と研究が興味の中心でした。
実は大学生の頃は宗教ではなく数学について学んでいました。科学的な考え方が好きだったのです。宗教と科学は一見、相反するものに見えますが、そうではなく違う角度から関心を持って考えるということが言えると思います。私たちは科学的なものとしてこの世界を理解しようとしますが、それとは別に人間的な関心として、人生の意味、私たちが存在している理由、命はどこからくるのか、亡くなったらどこにいくのか等を考えるのは宗教の領域と思います。いろいろな角度から世界を見てみたいと思ったのです。
現在、学長という役職につき、「対話」についてよく考えています。私が考える対話とは、他の人と接するにあたって、妥協するのではなく対話を通してお互いに真理を探究することです。各個人、価値観は違いますよね。多様性を受け入れ、他人と自分の意見を正直に話し合い、お互いの意見を聞いて真理に近づくことが大切です。そのためには、だれもが自分の考え方は限定的であるという事実を認める必要があります。私はこの「対話」の必要性を学生たちに発信したいのです。
「人間の尊厳のために」という教育モットーを体現するために、私は学長就任時に「地球規模の関心、私たちの貢献」をスローガンに掲げました。グローバル化した世界の中では、すべてのことは地球規模で考えなければなりません。例えば、地球温暖化の問題は、誰か一人が解決できるわけではないですし、一つの国で解決できるわけではありません。様々な問題に対して地球規模で考え、それに対して自分がどのような貢献ができるのかについて主体的に考えることが重要です。学生のみなさんにはそのような考え方を在学中に身につけて欲しいです。
私は本学の学生を誇りに思っています。在学生だけでなく卒業生の皆さんからも自分が考えたことや実行したことについての話を聞く機会がありますが、私はそれがとても楽しみですし、大きな喜びでもあります。
南山大学学長
ロバート・キサラ
1957年生まれ。米シカゴ出身。ディバイン・ワード大学数学科卒業後、カトリック神学連合大学院神学研究科、東京大学大学院人文科学研究科修士課程および博士課程を修了。
https://www.nanzan-u.ac.jp/