高齢者介護事業から
地域貢献活動へ発展

社会福祉法人みささぎ会

大阪府藤井寺市と堺市で高齢介護を中心に事業を展開する社会福祉法人みささぎ会。近年では、生活困窮者レスキューや認知症予防自立支援など、地域貢献活動も積極的に取り組んでいる。さらに従業員向けの小規模保育園を運営するほか、社員の福利厚生にも力を入れる奥田赳視理事長に聞いた。

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認知症予防にいち早く取り組む

社会福祉法人みささぎ会は、高齢化社会が進む中で、地域社会に高齢者が安心して暮らせる場所をつくろうと、奥田理事長の父が立ち上げた。現在、特別養護老人ホームのほか、デイサービスセンターやヘルパーステーションなど高齢介護事業を軸に、年々高まる介護サービスへの需要に幅広く応えている。

中でも認知症予防に積極的に取り組んでいる。2006年という比較的早い時期から、大阪大学と「薬に頼らずに認知機能をどう維持するか」という共同研究をスタート、それを元にしたアクティビティープログラムを提供している。「今でこそ“脳トレ”という言葉が一般的になりましたが、当時はまだそうしたデータがそろっていなかった。簡単な計算問題などとともに軽い有酸素運動をすると、認知機能の低下を防ぐというデータが集まってきたことから、プログラムに加えました」と説明する。

さらに「お楽しみ家計簿」というオリジナル教材を開発、利用者同士のコミュニケーションに活用している。「決められた料理を作るために必要な食材と金額を計算していく、というものですが、グループでやってもらうと『私はニンジンがいい』といったように会話が生まれ、笑いが絶えない」と好評だ。

他にも「デュアルタスク」と呼ばれる計算問題と運動を組み合わせたものを実施している。「定期的にMMSE(ミニメンタルステート検査)という専門的な認知症の検査を実施していますが、予防プログラムに日々取り組んでいる人は数年たっても同じ点数を維持している。取り組んでいない人と比較しても、機能維持につながっているというデータが出ています」と明かす。また、これらのプログラムが認知症予防だけに限らず、他の疾病の早期発見にもつながるのではないか、と大学の研究機関とともにデータを収集しているという。

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困った人たちのための事業を

同法人のもう一つの特徴は、「高齢者の尊厳を守る介護」を大事にしていることだ。「例えば、食事の際につけるエプロンは、どちらかというと、介護士が仕事をしやすいように介護士目線で作られているものが多く、高齢者の尊厳を傷つけているのではないかと考え、テーブルやいすの高さ、スプーンなどの環境を整えることで食べこぼしを減らすなどの取り組みで、尊厳を守る介護サービスを提供しています」と語る。

丁寧な介護サービスを提供するため、奥田理事長は働きやすい職場環境の整備にも注力する。「スタッフが働きやすいと思わなければ、いいサービスにつながらない。介護職というのはブラックだというイメージが広まってしまっていますが、決してそうではないことを伝えたい」といい、従業員の福利厚生を充実させている。スタッフ向けの小規模保育園の設置や奨学金の返済支援のほか、夫婦で勤務している場合にはボーナスをプラスするなど、細やかな対応で離職率を抑えている。奥田理事長は「入居当初など、環境が変わって介護を拒否する利用者もいますが、日々丁寧なあいさつから始めていくと、人間関係を作れるようになり、お話や笑顔が増えていく。みとった後にご家族からお礼の手紙をもらうことも多く、それが励みになるような職場環境を今後も整えていきたい。ケアサービスは貢献度の高い仕事であり、社会インフラに近いものですから、若い人にチャレンジしてもらいたい」と訴える。

「何か困ったことがあればみささぎ会へ」と、福祉サービス以外の地域貢献活動にも精力的に取り組んでいる。2015年4月には地域の孤立支援などをサポートするソーシャルリレーション事業を立ち上げた。「少子高齢化によって、日本の地域社会は弱体化しています。役所にも行けず、家に閉じこもってしまい、社会福祉制度を利用すること自体が難しいという人も多い。スタッフを派遣して、必要なものを届けたり、施設で給食を無償で食べてもらったり、次の生活再建の基盤を整えるための居場所を一定期間提供する無料低額宿泊事業も始めました」と語る。2023年からは子ども食堂もオープン。高齢者だけでなく子育て世代の応援もしている。

少子高齢化が進む中、今後も地域における社会課題の解決に全力で取り組んでいくという奥田理事長は「今が正念場。介護に限らず、困った人たちのために事業を展開することが、10年後につながるはず。『みささぎ会がある地域は暮らしやすい』と感じてもらえる人が増えていくように、地域社会を支える存在でありたい」と力を込めた。

社会福祉法人みささぎ会理事長

奥田赳視

大阪府藤井寺市と堺市で高齢介護を中心に事業を展開する社会福祉法人みささぎ会。近年では、生活困窮者レスキューや認知症予防自立支援など、地域貢献活動も積極的に取り組んでいる。さらに従業員向けの小規模保育園を運営するほか、社員の福利厚生にも力を入れる奥田赳視理事長に聞いた。

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