活躍支援型対策で
復職者をサポート

合同会社活躍研究所

産業医として長年、メンタルヘルス不調者に向き合ってきた合同会社活躍研究所の野﨑卓朗代表。従来の「配慮型」のアプローチではなく、「リワーク」というリハビリプログラムを活用した「活躍支援型メンタルヘルス対策」を提唱。復職者支援のスタンダードとして企業に取り入れてほしいと訴える。

01

現在も三菱ケミカルグループで産業医として勤務している野﨑卓朗代表が、同社を設立したのは2022年。産業医としての役割を果たす中で、職場復帰に困難を抱えるメンタル不調者を目の当たりにしてきたことから、メンタルヘルス不調者の復職に特化した支援が必要だと感じたことが契機となった。「産業医だとサポートできる範囲が限られてしまう。コンサルタントであれば、産業医の枠を超えてお手伝いができると考えました」と振り返る。

野﨑代表がメンタルヘルス不調者の復職支援として提唱するのは「活躍支援型」のアプローチだ。メンタルヘルス不調者が120%の力を発揮できると信じ、適切な支援を行うことで、より効果的な復職を実現できるとするもので、野﨑代表が特に重要視しているのが「リワーク」と呼ばれるリハビリプログラムだ。これまで、メンタルヘルス不調者の復職支援といえば、短時間の勤務から始めるなど徐々に負荷を上げていく「配慮型」アプローチが中心だったが、思うように復職できず、再び休職に至ることが多くあったという。だが、一部のメンタルヘルス不調者の中には再休業することなく活躍する人もおり、その多くは「リワーク」を利用していると気付いたことが「活躍支援型」を提唱するきっかけとなった。

「リワーク」を活用した活躍支援型メンタルヘルス対策
「リワーク」を活用した活躍支援型メンタルヘルス対策

「リワークでは、生活習慣や生活リズムを立て直すことから始まり、認知行動療法に基づいたプログラムもあるが、働いている時と同じように、毎日出かけて帰ってくる。見学に行くと分かりますが、『ここで働いているんですか』と思うくらいの雰囲気の中で、仕事の進め方やコミュニケーション改善に重点を置いたプログラムを実践していきます」と説明する。医師と1対1ではなく同じように復職を希望している人同士が集まり集団で実施することも効果的に作用しているといい、野﨑代表は「あの時一緒にがんばった仲間がいる、というのが復帰後心の支えになることもあります」と語る。

単なる職場復帰を超え、再発防止と働き続ける力を養うことを目指す「リワーク」を導入したところ「メンタルヘルス不調で休業した者のうち、リワークを利用せずに復帰した場合、復帰1年後の就業継続率は3割を切る。一方、利用者の95%は職場復帰後1年以上の就業を継続しています」とリワークの有効性を確信している。

02

可能性を信じることで再び立ち上がる力を引き出す

メンタル不調の原因は多岐にわたる。環境や他人にあることもあれば、個人のとらえ方や思考パターンに起因することも多いという。野﨑代表が提案する「活躍支援型」のメンタルヘルス対策は、支援対象者の可能性を信じ、前向きな姿勢で接することも重要視している。野﨑代表は産業医の経験に加え、コーチングの学びも大きな転機となったと言い、「コーチングの基本理念である『人には無限の可能性がある』という考え方に深く共鳴し、実践していく中で、復職支援を考えている方にもそういった関わり方をすると、立ち上がり方が違うことに気付きました。『僕は120%で戻れると信じている』という思いで接するとうまくいく。周りが配慮すると120%発揮できないままになってしまう」と支援対象者を信じ抜く姿勢が何よりも大事だと力を込める。

その一方で、メンタル不調に陥った当人の意識変化も大切なことだという。「『120%信じる』と言われてもなかなか難しいところがあると思いますが、『信じる』と言われ続けると自分をちょっと信じてみてもいいかもしれないと変わっていくことも多くあります」と、当人と支援者がお互いに可能性を信じ抜くことが「活躍支援型」のメンタルヘルス対策の鍵になると強調する。

今後、「活躍支援型」のメンタルヘルス対策が当たり前に導入される会社を増やしていきたいと意気込む野﨑代表だが、そこには国の復職支援の手引きの変更も必須だと訴える。「もちろん配慮は必要な場面も多くありますが、活躍するための支援が大事だということが「スタンダードになるように、企業側はもちろん、支援する側にも配慮ありきではない支援の形を知ってもらいたい。メンタルヘルス不調者の活躍を周囲が当たり前のように信じる社会につなげていきたい」と、野﨑代表は多くの人々に健康と幸せをもたらす未来へ向けて、活動し続ける。

合同会社活躍研究所代表社員

野﨑 卓朗

1983年生まれ。産業医科大学卒業。日本産業衛生学会 専門医・指導医。産業医として大手企業に勤務する一方で、2022年に合同会社活躍研究所を設立。中小企業向け「活躍支援型メンタルヘルス対策」構築支援コンサルティングやメンタルヘルス対策に関する調査研究などを行っている。

https://kyri.co.jp/