新たな価値を
想像するチャンス

京都府立大学

京都府京都市に創立120年以上の歴史を有する京都府立大学。塚本康浩学長は、唯一無二の
ダチョウ抗体研究の世界的権威だ。自身の経験を未来の若者へのメッセージと共に語る。
※写真に写っているのはエミュー。

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新しいものを創造し、多様性を尊重する場所

京都府立大学は、理系の分野において強みを持ち、教員1人当たりの学生数が少ないため、少人数制の教育が実施されています。これにより、学生たちは教員との深い関係を築き、個別のサポートを受けることができるので、より深く学ぶことができます。

本学の特徴の一つは、学生たちの温かさと人懐っこさです。学びながら友情を築き、協力しています。ほんわかとした雰囲気が漂い、学生同士が心を開きやすいアットホームな環境です。教授が「学生の顔と名前と出身地が分かる」状態で、知識を深める場だけでなく、友情を育む場としても機能しています。学生同士の距離が近く、相互理解が深まることで、学生たちは協力し合いながら成長しています。

また本学は、多様性が特筆すべき点です。キャンパスは人々が出入りする場所になっていて、地元の人々との交流も積極的に行われ、地域社会への貢献が大学の一部として育まれています。

02

異なる音色の半生

私は教員になりたいと思ったことはなく、むしろその逆でした。幼少期、吃音(きつおん)に苦しむ日々を送り、周囲からの嘲笑に耐えることが難しくなり、その結果、社会との関わりを避けるようになっていました。人々との関わりを避ける一方で、動物との関係は深まっていきました。特に、鳥に関する研究に没頭したことがきっかけで、獣医学部への進学を決意しました。鳥の研究は、自分にとって特別な意味を持っていました。

獣医師になった後、動物病院での勤務を経て、獣医師の役割が飼い主とのコミュニケーションを含む幅広い側面を持つことに気づきました。その経験から、吃音に立ち向かい、人々を和ませることが獣医師の役目であると思いました。

大学院時代では昼間は鳥類の研究に没頭しながら、夜間の獣医師としても活動し、さまざまな人々と接する機会が増え、英語のスキルの向上やコミュニケーションスキルの向上につながりました。獣医師としての経験は、多くの人々の生活に寄り添い、新たな視座を得られるものでした。

吃音の苦難を経て、キャリアを築いてきたこの半生は、非常に濃い時間でした。これまでの経験や困難も、新しい可能性を開拓する一環として捉え、進むべき道を切り開いた証だと考えています。

現代社会は、とても変化が早く、AIやChatGPTなどのテクノロジーが急速に進化しています。情報弱者になることは避けたい、そんな思いを抱く人が多い中、自身の「アンテナ」を鋭く保つことが大切です。動物の「触覚」は、生命の最期まで存在し続けると言われていて、情報を感じ取る一つの方法でもあり、チャンスを見逃さないためのツールです。情報をキャッチし、自分のものにするためには自己アピールが大切です。大学生の皆さんは、この自由な時間を活用して、自分の好きなことを追求し、社会に新しい価値を提供するチャンスがたくさんあります。

世界を揺るがすような大きな変革やシステムを構築することが、新しい世代の役割でもあります。自由な「触覚」を活かし、未来への情報をしっかりと掴んでください。大学の教育を通じて、知識と自由な発想を培って、社会に貢献する未来を切り拓いていってください。

京都府立大学学長

塚本康浩

1968年京都生まれ。獣医師、獣医学博士。ダチョウ抗体研究の第一人者。2008年4月に京都府立大学大学院生命環境科学研究科の教授となり、2020年より同大学学長に就任。

https://www.kpu.ac.jp/