【大学特集】
人間性を生かした
人材育成戦略
甲南大学
兵庫県神戸市を中心に四つのキャンパスを持つ甲南大学。甲南大学 中井 伊都子学長は「“伸びしろ”を存分に伸ばすことのできる大学でありたい」と語る。
ミディアムサイズの総合大学
甲南学園は、甲南高等学校、甲南中学校と甲南大学を包括する教育機関です。旧制の甲南中学校が1919年に設立され、2019年には創立100周年を迎え、学園全体としては105年の歴史を誇ります。創設者であり後に文部大臣も務めた平生釟三郎は、当時の知識偏重の教育に疑問を持ち、「人物を育てる」という理念のもとに甲南中学校を設立しました。彼の情熱に基づくこの教育機関は、学びを通じた人格形成に重点を置いています。
甲南大学は「人物教育」という教育理念を掲げ、生徒や学生が社会で活躍できるよう、時代や社会のニーズに応じた適切な知識や技術を提供すると同時に、彼らの人間性を育むことを使命としています。この理念は、100年の歴史を超えて変わることなく受け継がれています。
本学の「人物教育」は、「徳・体・知」の三つの要素がバランスよく備わった人材を育てることを目指しています。これが、甲南が世に誇るべき人物教育の理念です。現代において、この理念を具体的にどのように展開していくかは難しい課題ですが、8学部14学科・1学環にわたる専門教育を中心に、全学共通教育においても充実した多彩なプログラムを提供しています。
また、キャンパス内で行われるすべての活動を、正課外教育と位置付けて重視しています。私たちが目指す理想の人物教育とは、三つの教育プログラムをバランスよく修得することです。甲南大学の「彩り教育」を通じて、学生は自らの個性を発見し、伸ばし、磨くことができます。これが、105年の歴史を誇る甲南学園の人物教育の最大の強みであり、卒業生が将来の社会に貢献することを期待しています。
甲南大学の特長は、「ミディアムサイズの総合大学」です。同大学は岡本キャンパス、西宮キャンパス、ポートアイランドキャンパス、白川台キャンパスの四4つのキャンパスを有していますが、全学共通教育は岡本キャンパスを中心に展開されています。岡本キャンパスでは、さまざまな学部・学科・学環の学生が交流し、協働して学び、成長する環境が整っています。8学部・1学環の学生が学び合うサイズ感の中で、多彩な視点や知識が生まれることも、甲南大学の魅力の一端です。
自己探求と挑戦
私は学生時代、京都で外国からの訪問者向けにボランティアガイドを行うサークルに所属していました。このサークルは、京都の複数の大学の学生が協力して運営しており、異なる大学の学生との交流を通じて、多くの人々と知り合うことができました。その交流の中で、外国人の方々から日本に関する視点を学ぶこともできました。当時、海外旅行の経験はありませんでしたが、この活動は私にとって、国際的な視野を広げる最初の一歩でした。実際に海外に行ってみると、外国の方々から日本に関する質問を受けることがあり、自身が日本について十分に知識を持っていないことに気づきました。この経験から、私は日本文化や歴史に関心を持ち、同時に世界に目を向けて国際法を学びました。学生時代に外国の方々と交流し、日本をどのように見ているのかを知る機会を得られたことは、大変貴重な経験でした。
多くの学生が自分自身のアイデンティティについて迷っていると感じます。大学生活は、自覚しないとあっという間に過ぎ去ってしまう時間ですので、社会に漕ぎ出す前にさまざまな経験をしたり、関心のあることを貪欲に学んだりすることが重要です。単に単位を取ることに集中するのではなく、興味を持つことに積極的に取り組み、さまざまなことに挑戦して自己を発見し、個性を磨いてほしいと思います。将来の社会は予測不可能な要素が増える傾向にありますが、変化に対する柔軟性を持ち、恐れずに目標に向かって挑戦してください。
甲南大学学長
中井 伊都子
1989年京都大学法学部卒業。1991年京都大学大学院法学研究科社会学修士課程修了。1998年甲南大学法学部助教授、教授、学部長、キャリアセンター 所長、副学長を経て、2020年より現職。
https://www.konan-u.ac.jp/