院長夫人の支援から
医療課題を解決

株式会社ジャパンウーマンソサエティ

開業医の院長夫人を対象にした「医っぽの会」の運営をはじめ、クリニック開業のサポートや経営支援など医療業界を中心に活動を行う株式会社ジャパンウーマンソサエティ。近年では、人材育成・福利厚生の支援やWebサポートに加え、アメリカでの日本文化の普及活動、カンボジアでのチャリティ活動など、幅広い事業を展開している。「誰かの役に立ちたい、という想いが派生して広がっていった」という横山実代代表に話を聞く。

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自身の経験に裏打ちされた実践的なサポートを提供

同社の事業は、「人助け」の精神から広がっていった。その起点となったのが、開業医の院長夫人をサポートする「医っぽの会」だ。勤務医から開業医へと転身すると、医師は経営者となる。しかし、一般企業とは異なり、開業医の場合は経営の多くを家族が担うケースが少なくない。そのため、院長のみならず、院長夫人にもマインドセットの転換が求められる。また、スタッフの採用や育成も医院運営において極めて重要な要素だが、多くの院長夫人は人事管理の経験がなく、スタッフとの関係構築に悩むことも多い。「未経験だとどう対応すればよいか分からない。相談できる相手もおらず、学ぶ場所もない。当社では、そうした悩みを解決する場を提供しています」と語るのは、同社代表の横山氏だ。同社では、クリニック経営のノウハウが学べる実践経営講座や、レセプト(診療報酬請求)に関する医療事務リーダー育成講座など、クリニック経営に必要な知識を学べるセミナー開催している。また、「医っぽの会」では院長夫人達と共に診療報酬やスタッフとのコミュニケーションのとり方、ネットリテラシー向上など、クリニック運営の細かな事に関する勉強会を定期的に開催し、全国の院長夫人のコミュニティを運営している。

この会の大きな特徴は、横山氏自身が開業医の妻として苦労した経験を持っている点だ。「結婚当初、私たちにはほぼ貯蓄もなく、個人事業主だったため、生活費にあてられる金額はごくわずか、月に10万円程度でした。当時、夫はドクターではありましたが、経営者としての知識・経験はほぼゼロでしたし、もちろん私自身にも経営のノウハウなどは全くありませんでした。私は『これでは生活できない』と危機感を抱き、夫の持つ魅力を最大限に打ち出すなど、さまざまな施策を実行し、結婚からわずか2年で法人化、1日100~150人の患者を受け入れるクリニックへと成長させることができました」と振り返る。こうした実体験に基づいた具体的なアドバイスは、会員からの評価も高い。例えば、「タイムカードを置く場所でスタッフとのトラブルが生じることもある」と横山氏は指摘する。「また、スタッフとのコミュニケーションの取り方、距離感に悩む方も多いです。クリニック経営にとって人材は重要。診療に集中しているドクターには見逃してしまいそうな細かな部分まで気を配ることが、スムーズな医院運営につながります。これまで25年以上、クリニック経営に携わってきたなかで、私自身が苦労や失敗をした経験が誰かの役に立てば嬉しい。私の失敗こそが、皆さんにとって最も学びになる教材だと思っています」と続ける。

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人の役に立ちたいという想いを原動力に

「医っぽの会」以外にも、同社は人材育成や医療業界特有の課題解決にも積極的に取り組んでいる。その一つが、クリニック向けのウェブサイト管理事業だ。これも横山氏自身の経験から生まれたものだという。「ホームページの運用は専門家に任せれば問題ないと思っていましたが、改めて見直してみると、SEO対策などが全く機能していなかった。当院と同様に、開院時にだけ熱心にホームページを作成し、その後は放置しているクリニックが多いと知り、この分野のサポート事業を始めました。最近では、信頼できる専任のSE(システムエンジニア)を一人雇うことを勧めています」と説明する。

また、今後は医療事務スタッフの地位向上にも力を入れていく考えだ。横山代表は「レセプト管理を担当する医療事務スタッフは、クリニックの根幹を支えている存在です。しかし、医療業界では低所得の職種とされ、診療後も残業を強いられるケースが少なくありません。事務職(受付・レセプト含む)の方が他の医療従事者よりも仕事量が多いと思います。正当な評価を受け、適正な報酬を得られる環境を整えるために何が必要か。そうした視点を持ちながら、業界全体の意識改革に取り組んでいきたいと考えています」と語る。

多方面にわたる事業を展開している同社だが、横山氏の原動力は「人の役に立ちたい」という純粋な思いにある。「『出会えてよかった』『救われた』と言ってもらえれば、それだけで十分です」と笑顔を見せる。「私が生きている間に世界が平和になるかどうか、それは分かりません。しかし、自分が関わった人や、相談を寄せてくれた人に対して、何か役に立てればそれでいい。それだけを考えて、ここまで突き進んできました」と語る一方で、「お金がなければ幸せにもなれないし、心に余裕も持てない」という現実も理解しているという。「そのためにどうすればよいのか。今後も経営者や院長夫人に対し、具体的なノウハウを積極的に伝えていきたいですね」と意気込む。横山氏の経験と情熱を生かした経営支援は、多くの医療従事者にとって貴重な学びとなり、業界全体の発展につながっていくことだろう。

株式会社ジャパンウーマンソサエティ 代表取締役

横山実代

1975年、群馬県出身、薬学部卒業後、外資系製薬会社にてMRとして勤務。退職後、栃木県の開業医へ嫁ぐ。素人からのスタートであったが、旧医院からの移転開業、新規クリニックの医療法人化を経験。2013年、地元栃木の地域活性のため、株式会社とちぎいちご王国を設立。2018年、活動の幅が広がり、株式会社ジャパンウーマンソサエティに社名変更。

https://jwsociety.jp/