エンタメとコラボで
日本酒を世界に発信

ジザケジャパン株式会社

全国各地の酒蔵の販売マーケティングを担うジザケジャパン。小針勉社長は「異業種参入組だからこその発想を活かしたい」と「日本酒×エンタテインメント」をテーマに日本酒を世界へと発信する

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売り方とマーケティング力が業界の課題

ジザケジャパンは2001年、日本各地の蔵元でつくる「日本地酒協同組合」が母体となり、各蔵元の販売・マーケティングを担うために設立された。小針代表は「酒蔵には酒造りに専念してもらい、マーケティングや輸出などを請け負い、イベントをフックにして、グローバルマーケットに地酒を輸出するのが主な活動です。2021年に代表に就任してからは業務の一部を外部委託する『BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)』も進み、卸会社でありながらイベントを運営するスキルも持っている、という部分が強みになりました」と説明する。

日本酒とは縁遠い音楽業界で、幅広い業務に携わっていた小針代表は、外資系大手CDショップチェーン時代の経験が現在の糧になっているという。「販促誌などを含めて、広告代理店のような業務から、ライブの制作や出資、アパレルの立ち上げやコラボカフェなどの新規事業も多く担当していました。中でも、コラボ事業では魅力あるものを掛け合わせることの爆発力を実感しました」と振り返る。

当時、コラボカフェ事業で手がけたビールやスパークリングワインのラベル商品が人気を博した実績もあり、「最初は自分が造った酒にラベルなんて軟派なものを……と難色を示した人も、実績を積むことで考え方が変わっていった。それを実際に目にしていたので、日本酒業界も企画やマーケティングに力を入れれば、それが酒蔵の支援につながると思った」と語る。

小針代表は就任以降、利幅の少ない日本酒に付加価値を付けて、生産者価格を上げるという日本酒業界の事業構造の改革に注力している。「海外のマーケットがこれだけ伸びているのに、日本ではずっと価格が据え置きなのは、どう考えてもおかしい。良いものを作って、適正な価格に販売するというポートフォリオの変革が日本酒業界のテーマで、売り方とマーケティング力が課題」と語る。その解決策の一つとして、「TOKYO SAKE FESTIVAL」を開き、海外のバイヤーや国内大手の取引先、インフルエンサーらを集め、魅力ある日本酒の世界幅広い市場への展開をサポートしている。

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日本酒軸にメードインジャパンを輸出を

また、その土地ならではの原料を使った生粋の地酒「郷酒(さとざけ)」の展開にも力を入れている。「日本酒の始まりは、その土地の米で酒を醸し、土地の人に飲んでもらうことだったはずなのに、今は人気の酒米・山田錦を取り寄せて日本酒を造るところが出てきている。それはちょっと違うと思う。地元のもので造った酒にこそ一番の価値があるし、その日本酒が売れれば米を作る農家も潤い、農業も盛んになる。その土地にある酒蔵を軸にしながら、農業や観光など他の業種も回っていくような仕組みを『郷酒』で表現していきたい」と語る。

小針代表は音楽業界時代のつながりから、人気ゲームシリーズ「龍が如く」などのコラボを実現した。また、音響機器メーカー「オンキヨー」が「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。(あの花)」とのコラボに注目。お酒の仕込み段階でアニメ使用楽曲の振動を加えるというストーリー性のある試みに共感し、今後も同社と様々な企画を計画している。
 伝統を重んじながら日本酒を主要産業にしていくことが、今後の業界全体のテーマという小針代表は「海外へと目を向けることが一番重要」と指摘する。「海外で日本酒イベントを開けば、日本酒を軸に、食やカルチャーなども合わせて、“メードインジャパン”を輸出できる。国内だけを見ると、苦しい時期かもしれませんが、日本酒は世界で支持されているというデータもあり、明るい未来しかない。国内しか見ていない酒蔵にグローバルな可能性を見せることが我々の役割」と力を込める。「日本酒×エンターテインメント」を掲げ、「郷酒」を世界へ広げる小針社長の挑戦は続く。

ジザケジャパン株式会社代表取締役社長

小針 勉

1974年、栃木県出身。外資系大手CDショップチェーンで、メディア営業やアパレル、コラボカフェなどの新規事業を数多く手がける。2021年、ジザケジャパン株式会社の代表取締役社長に就任。また、TOKYO SAKE FESTIVALを統括するゼネラルプロデューサーや日本地酒協同組合の事務局長を務める。

http://jizake-japan.jp/