インベーダー45周年
新たな驚きへの挑戦
株式会社タイトー
アーケードゲーム「スペースインベーダー」で一世を風靡し、その後も業界をリードしてきた株式会社タイトー。コロナ禍という転換期を経て、創業70周年を迎え、新しいエンターテインメントの創造を目指す岩木克彦社長に聞いた。
コロナ禍でゲームセンターにも変化
1978年に「スペースインベーダー」が登場し、世界的な大ブームを巻き起こした。アーケードゲームを楽しむゲームセンターも、スペースインベーダーだけを置いた「インベーダーハウス」が登場するなど、その後の日本のゲーム文化の礎を築いた。その後、ゲームセンターは、プリントシール機やクレーンゲーム、トレーディングカードなど時代とともに移り変わってきた。
岩木社長は今回のコロナ禍で、リモートワークなどの人々の行動変容が起こり、業界も一変し、ゲームセンターにも変化が迫られたという。そこで、謎解きとホラーを合わせた「地獄のタイトーステーション くらやみ遊園地」や、知育と体を動かすことを目的とした「あそんで!そだてる!らくがキッズ」というこれまでのアミューズメント施設にはなかったジャンルのコンテンツを導入した。「既存のお客様に向けた従来のゲーム機を強くしていくことに加え、新しいお客様を取り入れていく必要がある。さまざまな遊びが増えていく中で、“リアルに体験する”ということがポイントで、一つのコンテンツを元に人のつながりができるようなものを目指しました」と語る。
岩木社長のモットーは「努力は人を裏切らない」だという。「いろいろなチャレンジをしていますが、全てが成功するわけではありません。最初から順風満帆に行くものはなく、さまざまなトライ&エラーを繰り返しながらようやく形になっていく。そのためにはやはり人を大切にすることが大事。完璧な組織を作っても、お金があっても、組織を動かすのは人ですから、人を育て、大切にしていける経営者になりたい」と語る。
現場のたたき上げだからこそ感じることがあり、見える景色があるという。「縦割りで動いてきたため各事業本部間の人の交流や協力する体制が弱かったので、社長に就任してからはとにかく風通しを良くしようと、社員に発信しながら、努力してもらっています。30年近く店舗事業に携わってきましたので、従業員の力の大きさを痛いほど身にしみていて、マーケティング戦略などいろいろな要素もありますが最後は人なんです。働いている人がその気にならないと組織はうまくいかない」と話す。
新しいエンターテインメントの創出
2023年7月から、Googleの最新AR技術を使ってリアル空間でスマートフォンをかざすことで、画面内にスペースインベーダーが現れるARゲーム「スペースインベーダーワールドディフェンス」をローンチした。世界中のさまざまな人とコミュニケーションが可能だという。「今年がスペースインベーダー45周年ということで、もう一度スペースインベーダーというアイコンを世界中の人々に再認識してもらい、インバウンドの観光客にもタイトーステーションをしっかりアピールして、楽しんでもらいたい」と意気込む。
また、クレーンゲームも現代に合わせて進化している。「オンラインクレーンゲームは、ゲームだけでなく、新たなコミュニティーを創り出すことに成功しています。インフルエンサーやVTuberがライブ配信することで、視聴者が実際にプレーしたり、攻略マニュアルを作ったりと、二次的、三次的な広がりがあり、従来なかった新しいコミュニケーションが生まれています」と語る。
70年を超えてもなお新しいエンターテインメントを創出し、岩木社長は「笑顔や新たな驚き、人とのつながりを提供する」というミッションに挑戦していく。
株式会社タイトー代表取締役社長
岩木克彦
1970年、熊本県出身。1988年に技術職で入社後、営業職、店長、テーマパーク責任者、スーパーバイザー、地方含めた営業部長、直営店舗営業部長など歴任。2017年に執行役員に就任。2020年、マーチャンダイジング事業本部長。2021年から現職。
https://www.taito.co.jp/