女性のための検診で
美容医療の未来担う

医療コンサルタントを軸にするイデアグループで、美容医療業界特化型求人紹介サービスを展開するイデアヒューマンリソース。20代で美容医療業界に飛び込み、長年美容医療のクリニックに関わってきた松岡代表は、22年4月にグループ初となるレディースドックを特徴にした婦人科クリニックを立ち上げた。松岡代表は「イデアグループの従業員は8割が女性で、グループ内に10ブランドもクリニックがあるのに、女性専門クリニックがなかった。それもおかしいなと思っていたんですが、何より従業員の女性たちに検診を受けてほしかった」と振り返る。

会社の福利厚生で受診できる健康診断や人間ドックは、婦人科系の検診がサポートされていないことも少なくない。さらに、婦人科系疾患の検診率が低いことから、松岡代表は「婦人科系の検査をオプションで付けられる、ではなくそれをメインの検査にしたものを作りたい。福利厚生として働く女性たちがいつでも気軽に検診を受けられるクリニックというコンセプトで立ち上げました」と強調する。子宮頸がんなどの婦人科系の疾患を中心に、血液検査や感染症など、簡単なものから人間ドックのように全身と合わせてしっかりと検査できるものまで、さまざまなプランが用意されているが、何より一番の特徴は婦人科の専門医のみで、全員が女医だということだ。松岡代表は「元々イデアグループ自体が専門医にこだわっているというのもありますが、女性のための検診ですから。そういった部分に重きをおいています」と説明する。

　長年、コンサルタントやアドバイザーとして美容医療業界に携わってきた松岡代表はここ数年の状況を「美容医療クリニックも変動の時期だった」と語る。大手クリニックから数年で独立するドクターが増え、個人クリニックがもてはやされている傾向にあるといい、「少し前まで、この業界のメインだったのは、美容医療に興味がない人もテレビCMなどで名前は聞いたことがあるという大手の美容クリニックでした。ですが、今は個人クリニックの勢いが上回っています」という。さらに、テレビCMや広告よりSNSでの口コミやレビューが重要視され、今や広告費を使わないのがスタンダードになりつつある。松岡代表は「独立するドクターが増えると、技術力が落ちる。言葉は悪いですが、リサーチ力のない“情報弱者”は技術力のないドクターのところで何回もやり直すことになってしまうし、その反面、ちゃんと知識を持っている人はそれなりの費用をかけて技術の高い医師を指名して、施術を受けられる。その差はSNSの発信力です。高い金額でウェブ広告を出したり、SEO対策をしたりする時代ではない、と感じています」と指摘する。

　10年先の美容医療業界の広告戦略もSNSの進化次第だといい、「今までは韓国が美容大国といわれトップを走っていましたが、それを追いかける国も増えており、今まで以上にSNSに振り回されるのではないか、と感じています。ブランドにもよりますが、美容外科であれば、手術の技術力が高いドクターがいることや、脱毛なら最新鋭の機器を導入していることなどのブランディングが鍵になると思います」と力を込める。

SNSの口コミが有力な来院きっかけになるとはいえ、患者にとってクリニック選びは難しい。「やっぱり複数の病院をカウンセリングで回るしかない。インフルエンサーによる『有名な○○先生にやってもらった』という声も信頼できるかもしれませんが、やはり個人それぞれ顔は違いますから、SNSなどで気になったクリニックを、大手から中堅、個人までいろいろと目星をつけて、たくさん話を聞く。あとは、悩み別に直したいところと同じ症例をたくさん挙げているクリニックに行くのも、一つの手だと思います」とアドバイスする。

　松岡代表は美容医療を受けようか悩んでいる人とクリニックをマッチングするサービスにも興味があるといい、「クリニックに行くとドクターと話さなくてはいけないけれど、そういったマッチングサービスの場所があれば、さまざまなクリニックの知識があるカウンセラーに相談できて、より最適なクリニックを選ぶことができる。そういうニーズもあると思う」と展望する。

　イデアグループ内では、日本の美容医療クリニックで初めてドバイに開院するクリニックの立ち上げに携わるなど、その豊富な経験を武器にさまざまな事業を手掛ける松岡代表。「美容医療のことなら、なんでもやってみるという気持ちです」と熱い思いを語る。