【大学特集】
広大なキャンパスで地域に貢献

北海道大学

北海道大学では、東京23区を上回る約660平方キロメートルという広大なキャンパスで、学生たちが学びを深めている。寳金清博総長は「大学と都市がほぼ同時にスタートし、地域の発展に重要な役割を果たしている」と大学の特徴を語る。

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自然を基にした学び

北海道大学は1876(明治9)年、札幌農学校として開校されました。正確には不明ですが、当時の札幌市の人口は2000人にも満たなかったといわれています。つまり、北海道大学と札幌市の街はほぼ同時に歴史がスタートしているのです。大学と都市が併存しながら、街の中心部に非常に広いキャンパスをもっている点は、他の大学にない特徴だと思います。

北海道大学は日本で最大の12学部を有する基幹総合大学であり、特に農学部は、長い歴史と伝統を誇る学部で、卓越した研究と教育を行う特色ある学部といえます。また、他の大学ではなかなか見られない水産学部や獣医学部も特徴的です。北海道の豊かな水産資源の研究や水産業、酪農も盛んで大型動物を扱う需要が高い地域という背景もあって、北海道地域の発展に重要な役割を果たしています。

さらに、サークルや部活動も個性的で、特に応援団は創部から100年以上の伝統があります。利他の精神を持って、権力におもねらず、弱い者を助ける。このような精神は素晴らしいと思い、個人的にも応援しています。その他、北大ヒグマ研究グループといったヒグマが多い北海道ならではの団体もあります。これは市民科学とも呼ばれており、専門家ではない人々がクマの生態を追っていき、科学者と連携しているのです。まさに北海道らしいサークルといえます。

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医療の第一線から教育の場へ

私は医学部に行き、一人前の医者になることが絶対的な目標でした。外科医を目指したのですが、この領域では優れた先生に弟子入りしなければ成長することは難しいのです。幸いなことに、脳外科医として最も尊敬する上山博康先生の指導を受けることができました。外科は一子相伝の世界なので、上山先生の歩き方や話し方まで学びました。脳外科を専門として大学病院や民間病院で勤務しているうちに、自分の培ってきた技術を後輩につなげたいと思い、教育に携わろうという気持ちが強くなりました。

外科医は生涯を通して務められるものではありません。まれに70、80歳までメスを握る方もいますが、脳神経外科の場合は大体60歳ほどで第一線から退くケースが多く、私も65歳ごろまで手術をしましたが、次世代につなげるため教育の場を整えなければという意識もありました。その他にもさまざまな理由はありますが、大学の状況を概観した際にマネジメントに携わる必要性を感じたため、大きな決断ではありましたが、総長の任を引き受けました。

学生には「アウトゴーイング」であってほしいと思っています。多様な人に出会い、多様な環境に身を置く。日本中の学生には積極的に学びとりに行く姿勢を身につけてほしい。チャンスと思った物事はつかみに行くことが大切です。対処していくのが困難なこともあるかもしれませんが、経験を積み、ぜひ自らさまざまなことに挑戦していってほしいと思います。

北海道大学総長

寳金清博

1954年北海道生まれ。北海道大学医学部医学科卒業。医学博士(北海道大学)。米国カリフォルニア大学デービス校客員研究員、札幌医科大学医学部教授、北海道大学大学院医学研究科教授などを経て、2013年北海道大学病院長、同大学副理事、2017年同大学副学長を歴任し、2020年10月から現職。

https://www.hokudai.ac.jp/