人材を大切に
自然回帰の事業を
篠田株式会社
岐阜で長年、土木・建設の専門商社であり、専門工事業者でもある篠田株式会社。創業100年以上の歴史を持つ同社だが近年、環境事業部(JALCA)を設置し、再生可能エネルギーをはじめとする環境に配慮した製品の企画提案・販売に取り組んでいる。安田秀成・常務取締役に、地域の特性を生かしたエネルギーの地産地消への思いを聞いた。
土木・建設の視点から環境に目を向ける
人が安全安心に暮らせる街、人にとって便利な街づくりのためのインフラ整備を進めてきた篠田株式会社。だが、それはある意味、自然破壊にもつながっていたという反省から近年、環境事業部(JALCA)を立ち上げた。カーボンニュートラル、地球温暖化対策として荒廃した山の整備のために間伐した木材を有効活用できる木製防音壁や木質バイオマスガス化発電装置を製品化した。安田氏は「ゲリラ豪雨で水害が発生する原因は、山が荒れ放題になっていて木や山が持っている本来の保水力が失われていることなので、間伐材を活用できる製品を開発しなくてはいけない、と考えたことが始まりでした」と振り返る。
間伐から加工、設置するまでを1サイクルとして、すべてを地域内で回すことにより循環型社会を構築。地域内で持続可能な社会を作ることができるという考えで、今では水路などを活用した小水力発電の提案・販売も行っている。
山や川が多い岐阜の特性を生かし、エネルギーの地産地消を目指す同社には、環境事業を展開するようになってから、入社希望者が増え、特に女性に興味を持ってもらえるようになったたという。安田氏は「数年前は、新卒の会社説明会などイベントに参加しても、情けないほど人が来なかった」と振り返る。
さらに「環境事業部はいまだに手探り状態の部分も多い。木質バイオマスガス化発電も海外から持ち込んだ技術なので、国内で動かすためには地道な研究を一歩ずつ積み上げていく必要があります。世情にも流されやすいので、理想論だけでなくどうしたら実現できるのか。チーム全員で話し合える雰囲気を作るよう取り組んでいます」と語る。
人材育成に注力し事業を拡大
給与面はもちろん「やりがい」を持てる仕事をしてほしいと、同社では人材育成にも注力している。スキルアップのための資格取得への支援も積極的に行っているほか、2024年6月からは奨学金の支払いのある社員に期限付きではあるが、補助手当の支給もスタートした。
「企業で一番大切なものは人材、人が財産」だという安田氏は、「社員にも人とのつながりを大事にしてほしい」という。「自分が営業時代、『俺が仕事中はお前も仕事をしろ』と言うような強烈なお客様がいました。でも、それ以上にいろいろと気にかけてくださり、優しい一面があった。その方がいなければ今の自分はいなかったと思います。人間関係をしっかり構築していれば、厳しいことを言われても受け入れられるし、学びになる。自身の経験から得た教訓をきちんと伝えていきたいなと思っています」と語る。
建設業界全体では、人材不足が大きな課題だ。安田氏は10年後、作業員は全て外国人になる可能性が高いという。「今ですら高齢化と言われていて、若手が少ない業界です。いくらDX化が進んでもマンパワーは必要になってくる。今のインフラを維持するためには、海外の研修生という形で作業員が増えていくのではないでしょうか」と予想する。
一方、環境事業に関しては「課題は多いですが、今後も人材の確保は進み、どんどん伸びていくはず」だという。人間として豊かな営みができる環境を作りたいと同社では現在、郡上市ひるがので化石燃料不使用、エネルギーの自給自足を目指した実験を行っている。安田氏は「問題は山積みですが、少しでも前進できたらと思っています」と前を向く。
同社のロゴマークは、「篠田の『S』から作られていますが、上下のブーメラン型は自然回帰。イメージカラーでもある青3色は木曽川、長良川、揖斐川の木曽三川を表しています」と、環境に目を向けたデザインを採用。同社は今後も「自然と共生」をテーマに安全で住みやすい街をプロデュースし続けていく。
篠田株式会社常務取締役
安田 秀成
1963年、岐阜県出身。1986年3月大学卒業後、篠田株式会社へ入社。工事部区画線課、篠田建機(出向)ののち営業部に配属。営業部長・管理本部長を経て2009年に取締役、2017年に常務取締役就任。現在に至る。
https://www.gifu-shinoda.co.jp/