【大学特集】
変化への柔軟性未来に挑戦

福島大学

1949年に設置された福島大学。三浦浩喜学長は同大学の卒業生。卒業生が学長に就任するのは新制大学後では初めて。 三浦浩喜学長は変化に対応する柔軟性と将来へ挑戦していく姿勢が大事であると語る。

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自由と自律を重視する大学

福島大学の特色は、学生一人一人の自由で自律的な学びを重視していることです。本学は独自の3学群・5の学類で構成されており、従来の学問の領域やカリキュラムにとらわれず、学生が自分の興味や関心に従い、自分なりのアプローチで学びを進めることを奨励しています。これらは、学生たちがより広い視野を持ち、独創的な問題解決力を育む一助となっています。

福島大学は東日本大震災後に食農学類を立ち上げました。同学類の目標は、農業復興を通じて地域社会への貢献をすることです。全国3位の広大な面積を持つ福島県内の八つの地域と連携し、学生と教員が地域の農業に触れ、安全な農産物の生産をサポートし、農業の実態に継続的に関わることで、地域との結びつきを深めています。

 学外活動にも力を入れており、学生たちはスポーツやボランティア活動に積極的に参加しています。特に陸上競技では優秀なコーチの指導を受け、北京オリンピックなどに出場した選手もいます。

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福島の学生と変化に向けた展望

私は学生時代、ほぼ365日彫刻に打ち込んでいた生活を送っていましたが、やがて自分の才能のなさに嫌気が差し、卒業研究は、美術教育学の論文を選びました。教育学や哲学の本を手当たり次第に読みました。

それでも、彫刻の経験は私にとって貴重なものでした。3K(汚い、怖い、きつい)と形容されることもありましたが、彫刻を通じて表面的ではない、常に見えない構造を想像するという物の見方を学びました。彫刻がなければ、今の私は存在しなかっただろうと思っています。挫折はしましたが、彫刻の経験は、私にとってなくてはならない成長と発見をもたらしました。

20代までは、大学で働こうと思ったことは全くありませんでしたが、中学校教員の経験から教育の大きな可能性に気づき、本格的に教育学を学ぶことを決意して大学院で勉強し直しました。

現代の教育は変革する必要があります。教員が学生に一方的に教えるだけではなく、問題解決能力や多様性を育む新しいアプローチが必要です。教育機関、自治体、企業は互いに協力し合い、学校の目標と社会課題とのギャップを縮め、より実践的な教育を提供すべきです。新しい教育を探るプロセスの中で、異なる地域や分野から相互に学び合い、多様な知識を取り入れる柔軟性が重要だと思っています。

福島県は、震災と原発の問題を現在も引きずっています。

先行きの見えない不安定な社会では、安定志向や保守的な学生が増える傾向があります。しかし、本来はこういうときにこそ変化に柔軟に適応し、変化を楽しむ姿勢が重要だと思います。直近の「安定」した生活を求めることによって、将来の生活が「不安定」化することもあります。若い時こそ、新しい経験を積み、変化に対応する柔軟性を養うべきです。福島大学での学びを通じて、学生たちには、胸を張って社会に立ち向かい、自信を持ちながら進むための力を身に着けてほしいです。

 積極的な姿勢が、未来への成功への鍵だと思っています。

福島大学学長

三浦浩喜

1961年生まれ。福島県出身。教育学修士(福島大学)。専門は美術教育学。83年3月福島大学教育学部卒業。その後、総合教育研究センター長、教育推進機構長を歴任し、20年4月より現職。

http://www.fukushima-u.ac.jp/