インフルエンサーが
ECでブランド展開
株式会社DREAMUS
自らインフルエンサーだった経験とノウハウを生かし、Instagramを軸に複数のアパレルブランドをECで展開するDREAMUS代表取締役の山下佑馬氏と桃原昌幸氏。競合の多いアパレル業界で挑戦を続ける2人に話を聞いた。
コア層に届くブランドを複数展開
SNSを使用したEC事業で業績を伸ばすDREAMUSだが、代表取締役の山下氏と桃原氏がともにインフルエンサーだったことが設立のきっかけだという。山下氏は「僕がInstagramを始めたのが7年前。Instagramがはやり始めたころでしたが、当時すでに桃原はフォロワー数が1万人超で、自分のブランドのアクセサリーをInstagramで販売していたんです。Instagramを使ってものを売るなんて、まだ誰もやっていなかったときだったので、そこに近づきたいと、まずは桃原の商品を購入して、DM(ダイレクトメール)でのやり取りから付き合いが始まりました」と振り返る。
その後、個人でブランドを立ち上げた山下氏が有名ユーチューバーのブランドを手がけることになり、他のインフルエンサーでも同じようなブランドを立ち上げたいと桃原氏と同社を設立。現在ではインフルエンサーをはじめ、固定ファンを多く持つ人物がプロデュースする五つのブランドを展開している。
「一つは大阪在住の20歳の男の子のブランドです。今、男性のファッショントレンドは韓国っぽいテイストなんですけど、そのブランドは真逆の艶っぽいイメージので、彼自身、そういうファッションが似合うのもありますが、同じようなテイストが好きな彼のフォロワーに対して売り込むという形です。他にも野球女子として人気の笹川萌さんのスポーツアパレルなど、大手ECサイトでは手に入らないようなものを複数展開しています」
一つのブランドに頼らず、コア層にしっかりと届けられるブランドをいくつも手がけているのが特徴だ。山下氏は「今は簡単にブランドが作れる時代になってしまったので、ノウハウがないとどれだけ有名なインフルエンサーでも売れないし、続かない。リスクヘッジではないですが、細く長く継続していく柱になるものをいくつか持っておこうと考えた」と語る。
インフルエンサーとしての経験を武器に
代表2人がともにインフルエンサーだったことについて、山下氏は「最初にユーチューバーのブランドを始めたとき、自分がモデルになった写真をInstagramに投稿し続けることでかなり売れた。そのノウハウがあるのはもちろん、『この子は伸びるだろうな』という人に声をかけて、商品と一緒にインフルエンサーのポテンシャルを伸ばしていける」という。
インフルエンサーと企業とのコラボは失敗することも多いが、桃原氏が「お互いの価値観が違うからうまくいかない。インフルエンサーとしても、企業としても経験があるので、バランスをうまく取れる」と強みを語る。
設立当初はアパレル業界の新参者として、仕入価格を高く見積もられたり、デザインを盗作されたりと苦労も多かったというが、「とにかく真面目に誠実に」というモットーは変わらない。「昔、受けてきたことの反面教師ではないですが、まずは一緒に組んでいる子に利益をもたらしたい」という桃原氏に、「その子たちが頑張ったから、僕らも潤う。その順番は絶対に変えたくない」と山下氏も声をそろえる。
EC全盛期で競合も多い中を生き残るためには「とにかく継続することが一番大事。流行を追いかけるのではなく、コアなファンをしっかりと得られるブランドを細く長く続けていく。ただ変化しないわけではなく、新たなことにも挑戦する必要もある」と山下氏は話す。その挑戦の一つとして、海外でのブランド展開をスタートした。「国内のECは今後手詰まりになる。まずは親日的な香港と台湾で、ブランドの認知を広げる作業を始めました。だいぶ結果が出てきているので、これをパッケージ化して他のブランドに展開していきたい」という。
「売り上げが上がればうれしいけど、一人で稼ぐのは面白くない。ブランドをもっと増やして大きい組織になれば楽しそう」と桃原氏が語れば、山下氏も「楽しいのが一番」だと笑う。インフルエンサーとしての経験を武器に、SNSを使ったECで、海外も視野に挑戦は続く。
株式会社DREAMUS代表取締役
山下佑馬、桃原昌幸
愛知県名古屋市出身。2015~16年に、それぞれInstagramのアカウントを開設。フォロワーが増えたタイミングでアパレルブランドを立ち上げ、インスタグラマーの先駆けとして活動。その後、2018年に株式会社DREAMUSを共同で設立。現在は、Instagramを使用したアパレルEC事業を展開。