多様化する働き方
オフィスから実現
サイボウズ株式会社
事業の拡大に伴い、2015年に東京オフィスを移転した株式会社サイボウズ。社員のアイデアを存分に盛り込んだ新たな東京オフィスのコンセプトは「Big Hub for Teamwork」。コミュニケーションの活発化を狙いとしたが、21年にはコロナ禍の働き方に合わせ改装したスペースも。人材の多様化が進むなか、自由な働き方を推奨する同社。理念でもある「チームワークあふれる社会を創る」を実現したオフィス空間を改めて探る。
訪れる人々のハブになるような場所に
2015年の移転時には、全社員が参加する移転プロジェクトを展開。もともと多様なワークスタイルを推進してきた同社は当時からリモートで働く社員も多く、オフィスの存在意義といったところから意見交換が始まったという。そんな社員のアイデアや要望を取り入れながら完成した東京オフィスは、“コネクト”がテーマ。「Big Hub for Teamwork」をコンセプトに、社員だけでなくクライアントやパートナー含め訪れる人々のハブになるような場所にしたいという思いが込められている。
公園のようなエントランスは、同社が実践する「新しい働き方」のショールーム。まずは、動物のオブジェが飾られた「SHIBAベンチ」が目に入る。キリンは「kintone(キントーン)」、カンガルーは「Garoon(ガルーン)」と同社のサービス名ともリンクしている動物たち。さまざまな種類の動物たちを揃えることで、どんな人でもひとつのチームになれるといった多様性への意識を込めたという。
「SHIBAベンチ」周辺には、バル、ラウンジ、展望ファミレス席、集中スペースなど、自席以外でも個人やチームが集中してパフォーマンスをあげられる環境を整備。その日の状況や気分に応じて、執務フロア以外の場所を使って仕事が出来る柔軟なスタイルもポイントだ。また、キッチンスペースも設えられており、コロナ禍前には代表取締役の青野慶久氏が自らラーメンや豚汁を振舞うこともあったそう。
さらに、森やキノコ、空をモチーフにしたカフェ「cybozu.com 導入相談Cafe」というスペースも同社ならでは。会議室ではなく、オープンスペースで商談することで成約率が上がるのではないか。そういった思いで、クライアントやパートナーが気軽に相談できるカフェスペースを設置。とはいえ、コロナ禍ではカフェでの商談を断念せざるを得ない状況に。そのために新たに増設したのが、「cybozu FACTORY」だ。オンラインでの商談が増えたことから、もとはセミナールームだった場所を改装して配信スタジオに。定期的に行っていた情報発信のリアルタイムイベントも、この場所から配信できるようになった。
社員の働き方を尊重するオフィスへ
エントランス右手に広がる10の会議室は、1室ごとに都市の名前が付いている。全体を司るテーマ“コネクト”に基づき、港町(バルセロナやケープタウン)と宇宙に関連した都市(種子島やヒューストン)をチョイス。それぞれのイメージにあわせたカラーの内装になっているのも、こだわりのひとつ。カーペットは、その国のサッカーチームの色となっているのも同社らしい遊び心だ。そのなかの「ケープタウン」は、後方の壁がマジックミラー仕様に。隣の「シドニー」から室内の様子が見られるようになっている。「ユーザーテストを行う際など、実際の反応を忌憚なくチェックできるように」という開発社員からの要望から実現した新しい試みだという。
また、セミナー用の「Hands-On ROOM」は30台のPCが常設。以前は、セミナーの度に複数のPCを持ち込んでいたそうだが、常設することで業務の効率化を実現した。セミナールームや会議室は、基本的にすべてガラス張り。同社のコンセプト“公明正大”を形にしたともいえる。そのほか、エントランスにはハンモックなどの休憩用リラックススペースも用意されている。五感を養い、新しい発想を生み出すためにも最適な場所ともいえるだろう。
エントランスとは別フロアにある執務スペースは、パーテーションが少なく解放感のあるレイアウト。部署ごとの仕切りを無くし、異なる部署の社員同士でも気軽にコミュニケーションが取れるようになっている。誰でも利用できるフリーアドレスやミーティングスペースが広く取られているのも、社員の自由な働き方を大事にする同社ならでは。
社員一人ひとり、それぞれが望む働き方が実現できるように。自主性を重んじる社風が作り上げた同社らしいオフィス空間。同社のプロダクトが日々アップデートしていくように、多様性が進む時代に合わせ、より働きがいのある環境へと今後も進化していくことだろう。
※Qualitas Vol.16より転載