自動運転の時代に
新事業で雇用創出を
中央矢崎サービス株式会社
トラックやバスの運行管理システムやタクシーの料金メーターなどを販売・サポートする中央矢崎サービス株式会社。吉田幸市代表は、自動運転が普及するであろう近い将来を見据え、同社の強みを最大限に生かす新事業で、さらなる雇用創出を目指している。
時代の流れに合わせた新事業
旅客・物流業の安心安全に資する機器のシステム開発や販売、取り付けをメインに事業を展開する中央矢崎サービス。吉田代表はそのほとんどが“人に寄り添い依存している商品”だという。国内で実証実験が始まるなど、自動運転の技術開発は加速的に進んでおり、将来業界自体が根底から大きく変わる可能性も高い。吉田代表は「例えば、アルコールチェッカーは自動運転になったら不要になる。トラックに設置が義務づけられているデジタルタコグラフなど、弊社が手がける人を管理するための機器は徐々に必要なくなっていくでしょう。現在の事業をそのまま続けるだけでは、石炭産業のように淘汰されてしまう」と語る。
まずは、現在の主軸事業である機器取り付けなどの技術を電気自動車などに広げ、同社の強みを生かした新たな商品やサービスを創出。さらに、今までの延長線上だけでなく、テクノロジーと金融の統合など新たな枠組みへの挑戦に意欲を燃やす。
「電気自動車のタクシーに必要な機器を全部網羅して、それ専門の事業にするというのも面白いと思います。自動運転のタクシーが普及した後には、職を失うドライバーも出てくるでしょうから、今のうちから月々少額の積み立てをしてもらい、複数のドライバーでファンドを組成し、自動運転タクシーを購入して運営する、という投資案件もいいのでは、と考えています」と先を見据える。
既に、美容・健康事業と融合したプロジェクトも動き出している。吉田代表は「旅客・物流と美容・健康という一見交わらなさそうなジャンルを統合することで、今の時代に合わせた新しいビジネスが見えてきた」という。「個人タクシーには65歳以上のドライバーが多く、高齢者の運転に対する安心・安全というのは機器だけでは担保できない。人が運転する今の時代だからこそ、ドライバーの健康というところまで踏み込んでいかなくてはいけないのではないか、と考えました。美容といった面では、ドライバーの清潔感や好感度にもつながるだろうと思っています」と力を込める。
笑顔で仕事や生活にまい進できる環境を
吉田代表は、これまでベトナムやカンボジアで現地法人を設立した経験も持っている。「現地の従業員とトラブルになる日本企業もありましたが、自分にはそういったことが一切なかった。社員からは『社長は、最初に自分たちのことを信用してくれたから』と言われました。『率先垂範』という言葉が好きで、先に信用することで、相手に信用してもらう。そういう関係性が一番強いと思っています」といい、その志は経営にも生かしている。「お互いの信用が自信につながり、積極性や柔軟性を持っている社員が多い。彼らがいるからこそ、新しい事業にどんどん挑戦したいと思える」と強調する。
吉田代表は「10年後もしっかりと生き抜こうと思ったとき、今の時代は情報や技術の進歩が速すぎて、諸先輩方の背中が全く当てにならない。一つ変わるごとに、派生的にその周りも変わっていく。そこについていくためには、行動できる人が何よりも強いのではないでしょうか」と、未来を見据え新たなビジネスの構築に一歩を踏み出している。そして、その原点には“雇用創出”への思いもある。「『お金がない』ことも、『この先、いつお金が入るか分からない』ことも不安になってしまう。私が代表を務める以上、社の強みはもちろん、社員の強みを生かして笑顔で仕事や生活にまい進できる環境を創出したい。これを具現化するのが私の責務だと思っています。自分の周りの人たちには未来のことを考えてワクワクしてほしい。中央矢崎サービスは10年後、20年後を楽しみにしている会社です」と、さらに前を向く。
中央矢崎サービス株式会社代表取締役社長
吉田幸市
1966年、東京都出身。2018年ごろから中央矢崎サービス株式会社にコンサルタント等で関わるようになり、23年10月に代表取締役社長に就任。
http://www.chuo-yazaki.co.jp