内部統制コンサルを
オーダーメイドで

2006年の設立以降、内部統制や内部監査のコンサルを軸に事業を展開してきた同社だが、佐々野代表は日本企業における内部監査部門の立ち位置を難しいものだと評する。「内部監査はさまざまな部署の仕事を見ていくものなので、米国では将来社長になるためのキャリアパスという考え方がありますが、日本の場合、人のあらを探すような業務。収益を生み出す部門ではないので、評価されにくい現状があります」。そういった背景から、内部統制の評価や内部監査をアウトソースする企業も多く、同社はJ-SOX法（内部統制報告制度）に対応する上場企業はもちろん、上場を準備する企業など幅広いクライアントを抱えている。

日本でJ-SOX法が導入されたのは、2008年4月。当初は内部統制の専門家が不足しており、全く知見のない人がコンサルティングを請け負うこともある状況だったが、リーマン・ショック後は急激に依頼が減少したという。コンサル会社自体もなくなる時代を経てもなお同社が生き残れた秘訣を、佐々野代表は「やはりお客さまに寄り添ってきたこと。丁寧にヒアリングしたうえで現実にあったアドバイスをしてきたからだと思います。」と明かす。

佐々野代表は「内部統制の資料をみせていただくと、やりすぎていると感じることがある」という。同社では既にJ-SOX対応済みの企業の内部統制を見直すケースもある。完璧で立派に作成された資料や膨大なルールは、理想論に基づいて作成されたものであることが多く、業務の効率が下がるとともに、遵守が困難で監査法人に指摘されるという悪循環に陥ってしまう。

佐々野代表は「コンサルタントとは結局のところ、人間力です。私たちのような外部の人間が入ると緊張して言われたことは全部やらなくちゃいけないと、現場側から忖度されやすい。ですが、大切なのは本当に実現できるかどうか。難しければ他の方法も提案しながら進めるのが当社の大きな強みだと思っています」と力を込める。「それが結果として、監査法人と良好な信頼関係を築くことにもつながり、“三方よし”の状況を生み出します」

とはいえ、内部統制を始めとするリスクマネジメントは必要性が理解されないとスムーズな導入は難しい。佐々野代表は「将来起きないかもしれない損失にコストをかけて、社内手続きを整えるのは面倒なこと。クライアントには、それを納得して実施していただけるよう留意しています。クライアントのベネフィット、利益になることを常に意識しています」とも語る。

大学在学中に会計士の勉強を開始し、資格取得後は、ニューヨークの監査法人でも勤務経験を持つ佐々野代表は、日米両方の知見が今に生きていると振り返る。「海外の方は、日本人に比べると要点を押さえるのが得意だと感じます。当社でも、クライアントに向けて作る書類は分かりやすさに重点を置いていて、従業員にも、自分の言いたいことを最初に簡潔に伝えること、を常日頃から注意しています」と話す。

社内では従業員に対しての心理的安全性にも気を配っている。「やっぱり仕事を楽しいと思ってほしい。私自身、監査法人を辞めたときのきっかけが『楽しくなくなってきたかな』でしたから。当時、マネージャーに昇格したものの管理業務が増えて仕事に面白みを感じにくくなり、友人が立ち上げた会社に転職したことが、当社を設立することに繋がりました。だからこそ、楽しく仕事ができるようコミュニケーションを取りたい。疑問点があれば一人で抱え込まずに誰かに聞ける環境を整備することにも注力しています」と語る。

「監査法人対応、そして海外拠点の内部統制の整備や評価にも対応できるという強みを武器に、今後もクライアントに寄り添ったオーダーメイドのコンサルティングを続けていきたい」という佐々野代表は、内部監査のシステム化にも注力している。既に、海外企業がサービス展開しているリスク管理システムの導入支援も行っている。「システムの中には標準的なステップが組み込まれていますが、もう少し日本企業が使いやすいようなものを作っていきたい。そういった部分も含めて、海外の動きは常にキャッチアップしています」と内部統制・内部監査コンサルティングのリーディングカンパニーとして、さらなるサービス拡充を目指す。