地域情報に精通した
街のプロを目指す
文京住販株式会社
2006年の創業以来、文京区およびその周辺を主な商圏エリアとして地域に密着した不動産業を展開してきた文京住販株式会社。23年10月からは新たに恵比寿に拠点を設け、商圏エリアを拡大する。地域密着型で業績を伸ばしてきた経験を活かし、新拠点でも”街のプロ“を目指すという。
文京エリアに特化した地域企業として発展
文京住販は創業以来、文京区白山に本社を構え、地域に根ざした企業として地域貢献に注力することで業績を伸ばし続けてきた。主軸の売買の仲介のメインの顧客は、文京区に住みたい、と家を買おうと考えている個人が多いという。一村代表は「不動産やファイナンスのことをよく知っていて当たり前。地域のことをどれだけ知っているか、に価値を見いだしてくるので、地域企業として存在意義を作ることが業績につながった」と語る。
地域のことを知らずに不動産のセールスをするのは難しいが、特に文京区は教育熱が高く、学校情報はもちろん、病院などの周辺環境を含めた地域情報を欲する顧客がほとんどだという。一方、不動産を売りたいという人は文京区に愛がある人が多く、地元をよく知っていて、価値を正しく見いだしてくれる人に売りたい、という意向も強いという。一村代表は「公立の小学校でも人気に格差があるので、それが不動産価格に影響を与えている。そういった情報を我々がしっかりと得ていると、不動産の価値判断として理由も伝えることができる。納得感を持ってもらい、違った視点を持った物件探しをお手伝いできている、と自負しています」と強みを語る。
一村代表は「地域企業として地域に果たせる役割が十分かといえば、まだ物足りない」というが、文京区に特化した地域企業としての展開には規模を大きくしづらい、というデメリットも感じていた。「会社の形が長い間変わらない、ということもそうですし、働く従業員にとっては新陳代謝が生まれにくい、といった面もあったと思う」という反省点を踏まえ、新たに恵比寿に拠点を新設し、文京区の地域企業からの脱却への第一歩を踏み出した。
AI時代に「人ができること」を考える
新拠点を山手線沿線の恵比寿に決めた理由には、都心と城南エリア、また山手線の中と外、その両方を対象エリアにしたいという気持ちがあった。「文京区の地域企業ではなくなりますが、これまで手がけていた地域情報の発信などは当然同じように展開していきたい。文京区で成功した手法をベースに、セールス上のコンセプトとしては地域に精通した不動産のプロ、街のプロとして、お客様に必要とされる存在でいたい」と語る。新拠点でも不動産や物件にフォーカスするだけでなく、地域情報も包括して伝えることで、住んだ後がイメージしてもらえるようにしていきたいという。
AIを使った物件探しも普及しているが、そういったビッグデータの活用ができる時代だからこそ、都心および城南という新たな商圏エリアに挑戦しようと思えたともいう。一村代表は「ただただ単純な人海戦術は、間違いなくサービスの質が落ちる。だからこそこれまでエリアを広げずに文京区に特化していたわけですが、これまで営業マンがやらざるをえなかった仕事をAIに任せることができるので、その分、空いた時間を他のことに使える。エリアを広げてもサービスの水準を落とさずに提供できる。人ができること、やるべきことが変わってきているからこそ、AIというビッグデータに頼りながら新たに何ができるのか、という部分も考えていきたい」と不動産営業の価値を高めることへの自信を見せる。
同社の人事評価は、個人だけではなくチームでも評価し、成果については1か月ではなく、3カ月スパンで評価される。3カ月にすることで、途中経過を検証して軌道修正ができるのが特徴だといい、「営業活動を計画的にできるようにという意図ですが、不動産業の営業マンは社内でも競争というイメージがある。それを払拭(ふっしょく)したい。過剰なライバル意識を持たずに、自分の持っているノウハウを横や下の人間に惜しみなく提供する。そういった社内風土は成熟してきていると思っています。その方が顧客にいいサービスを提供できます」と胸を張る。
文京住販株式会社代表取締役
一村 岳史
1979年、大阪府出身。大学を卒業後、建売住宅を分譲する会社に入社。販売窓口の部署に配属され、多いときで年間100件を超える契約に携わり、さまざまなシチュエーションを経験。その後、転職先で本格的に仕入れ営業を始め、2010年に文京住販株式会社に入社。2015年に代表取締役に就任。
http://www.bunkyo-j.co.jp/