地震大国に安心を
独自開発の免震工法
株式会社ビーテクノシステム
“地震大国”といわれる日本で、住宅の免震に注力しているビーテクノシステムの谷山惠一代表。日本古来の工法をヒントに、独自の技術で一般住宅向けの免震工法を開発。その普及を目指す谷山代表に聞いた。
免震こそが建物の崩壊を防ぐ最も有効な工法
東日本大震災をはじめ、熊本地震や北海道胆振東部地震など大地震に見舞われ、“地震大国”ともいわれる日本。建物の地震対策は、構造を強くして倒壊を防ぐ「耐震」、ダンパーなどで揺れを吸収する「制震」、地面と建物を切り離して地震自体を建物へ伝えない「免震」という三つの工法がある。谷山代表は「免震は、建物の倒壊だけでなく、家具や家電製品の転倒・破損のリスクが低い。崩落や損傷を防ぐ最も有効な工法」だと訴える。耐震・制震と免震との最大の違いは建物に地震の揺れを伝えないこと。「耐震や制震では、建物自体が揺れるので家具や家電が転倒、損傷の可能性が高い。1995年の阪神大震災では、犠牲者の多くが建物や家具の倒壊によるものでした」と説明する。
橋梁設計で40年以上のキャリアを持つ谷山代表は、その技術を応用して独自の一般住宅向け免震化工法「Noah System」を開発した。「インフラである橋は、緊急車両が通るなど何があっても落ちてはいけないので、免震のものが多い。なのに、なぜ一般住宅には免震技術が普及していないのか。そんな素朴な疑問が開発のきっかけです。元々一般住宅の建築に関わっていなかったからこそ、独自の技術で開発できた」と語る。
こうして開発された免震化工法は、目玉焼きを作る時、フライパンを揺らしても、玉子はフライパンの上を滑って、一定の場所から動かない「目玉焼きの原理」で、家の基礎部分に、フライパンと同じフッ素樹脂加工した鋼板を敷き、その上に建物を建てるものだ。谷山代表は「これまでの免震工法は600~700万円近くなることが多かったが、300万円前後で抑えられるので、もっと免震を取り入れる人が増えるのではないか」と期待する。
実はこの工法、「石場建て」と呼ばれる日本古来の工法をヒントにしたものだという。「昔の家の基礎は柱が石の上に載っているだけだったので、地震が起きても、柱が石の上を滑り、地震の力を逃して、建物の揺れを低減させられた。1854年の安政の大地震でも『家がつぶれずに助かった』という記録が残っています」と解説する。
地震大国だからこそ地震対策を最優先に
新築だけでなく、既存住宅のリフォームでも導入可能で、「住宅をジャッキアップするなどの手間と費用がかかる可能性がありますが、空き家問題など、住宅再生といった部分でも免震の需要は増えるのではないか」と予測する。
谷山代表は「環境やSDGsに目が向けられていますが、地震大国の日本で、その安全対策が最優先だと思う」といい、「いつ来るか分からない地震をおびえているだけでなく、いつ起きても大丈夫だと思える保険だと思って、免震を取り入れてほしい」と力を込め
「地震対策の補助や優遇措置を増やすよう国にも働きかけていきたい。日本中の住宅が免震になり、地震を恐れなくていい生活を全ての人が手に入れるのが目標」と谷山代表は免震住宅の普及に注力を続けている。
株式会社ビーテクノシステム代表取締役社長
谷山 惠一
1954年、東京都出身。1977年、日本大学理工学部交通工学科卒業後、石川島播磨重工業(現IHI)に入社。橋梁設計部配属、海外Project担当を務めたあと独立。設計会社を立ち上げ、海外での橋梁建設プロジェクトに参画。2006年に株式会社ビーテクノシステムを設立。一般住宅の免震化を提案している。著書に「もう地震は怖くない!免震住宅という選択」(幻冬舎)。
http://www.btechsys.co.jp/