【大学特集】
多文化環境で国際社会への貢献を目指す
立命館アジア太平洋大学
立命館太平洋アジア大学(APU)は、在学生の半数を約100ヵ国・地域から集まった国際学生が占めるという国際的な教育環境と、革新的なカリキュラムを通じて、学生たちに国際社会におけるリーダーシップとグローバルな視野を育むことを使命としている。多様な文化やバックグラウンドを持つ学生が集い、相互理解と協力を重視した学びの場で、地域社会や国際社会への貢献を目指すAPUは、次世代のリーダーの育成に寄与している。
持続可能性にフォーカスした新学部
昨年4月、当時の出口治明学長の下、APUはサステイナビリティ観光学部を新たに設置しました。別府という観光都市に位置し、実践学習機会が豊富なこともあり、観光系の学びを拡充させる計画は、新学部設置が検討され始めた当初からありました。新学部の方針を議論していたさなか、コロナ禍に突入し、世界全体で観光のあり方が再考されることとなりました。学内でも新学部についてさまざまな案が挙がり、世界規模の課題であるサステイナビリティー(持続可能性)にフォーカスするという方向性が決定づけられました。
サステイナビリティ観光学部は、観光学とサステイナビリティ学の両方を学ぶことができる日本で唯一の学部です。観光とサステイナビリティとは、切っても切れない関係にあります。
魅力的な観光地であり続けるためには、その地域にある文化や自然、人々の生活が保護されていなくてはなりません。さらに、観光資源を守ることは、観光地としての持続可能性を目指すだけではなく、人類社会が資源を使い尽くし環境を破壊する道を避け、社会全体を持続可能なものへと導く鍵となります。新学部では、そのための専門知識を『環境・社会・経済・⽂化』の視点から複合的に学びます。同時に、現場での実践を促すカリキュラムとなっており、理論と実践の双方で学んだ、現実の社会課題を解決できる人材を育成することを目指しています。
これらの学びに加え、APUでは圧倒的な多文化環境で、文化的・社会的背景や国籍が異なる人たちと、互いの理解に向けて日々対話を重ねることになります。学生たちにはこのような環境の中で、世界共通の課題に対して、対話によって人々と協働できる人材になってほしいと考えています。
まだ見ぬ自分のポテンシャルが開花される場に
私は本を読んだり物を考えたりするのが好きで、勉強には真面目に取り組んでいましたが、人付き合いが非常に苦手で、サークルなどの活動にもあまり参加しませんでした。そんな自分を変えた最大のきっかけは留学です。1年間カリフォルニア大学に留学し、日系移民史を学びました。留学先では、日本の大学では関わることのなかった多様な文化的背景を持つ人々に出会い、次第に親しくなりました。自らも異文化に飛び込む体験をしたことで、かつて日本からアメリカへ渡り新たな人生を切り開いた日系移民への関心がより深まり、大学院へ進学することを決めました。
大学院卒業後、自分が目指していた将来像とは全く異なる大学教員の仕事を選びました。実際に教壇に立つと、学生指導は想像以上に楽しく、教育にエネルギーを注ぐことが大きな喜びとなりました。次第に大学の行政職にも携わるようになったのですが、大学全体を運営する経験は面白く、自分の思いもしなかったポテンシャルが解放される体験は大変貴重でした。今では学長を務めていますが、現在の姿も、大学で働き始めた当初は全く想像もしていなかったものです。仕事を通じて少しずつ自分の殻が破られ、可能性が開かれてきたと実感しています。
学生たちには、世界で自分の力を試し、国内外を問わず、どのような環境でも活躍できるスキルを身につけてほしい。大学は新しい自分を発見する場であり、試行錯誤の場でもあります。私はAPUを、若者のポテンシャルを解放する大学だと思っています。世界中から集まった学生たちの多様な価値観が混ざり合う環境では、驚きや発見が日常的であり、新しい可能性を見つけたい人には最適です。このユニークな環境で、それぞれが内に秘める力を、何らかのかたちで世界を変えるために、生かしてほしいと考えています。
APUは開学当初から「自由・平和・ヒューマニティ」を基本理念の一つに掲げ、世界平和への貢献を目指してきました。教職員だけでなく、学生や卒業生もその理念を共有し、世界をより良くするために働きかけ続けてくれることを期待しています。一人一人が身近なところから世の中を良くすることが大事で、小さいながらも意味のある行動をしてほしいと願っています。私もAPUの一員として、わずかでも他の人の役に立つように、少しずつでも自身の周りから良くなるように、努力していきたいと考えています。
立命館アジア太平洋大学 学長
米山裕
1959年東京都生まれ。東京大学教養学部卒業後、筑波大学文学修士(史学)取得。2024年1月1日から現職。
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