【大学特集】
「熱いスピリットで生きる人間」に

桃山学院大学

明治初期に来日した英国聖公会(英国国教会)の宣教師が創設した桃山学院。大阪の川口居留地を舞台に歩みが始まり、キリスト教新教渡来100年を記念する1959年に、桃山学院大学を開学した。現在は大阪府和泉市を拠点に二つのキャンパスを持つ。中野 瑞彦学長は自身の経験から「学生時代には思考力を養うトレーニングを重ね、自らの意志を持って主体的に行動し、熱いスピリットで生きていける人間に成長してほしい」と語る。

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「世界の市民」の意識醸成

桃山学院大学は、2023年に最も新しい学部であるビジネスデザイン学部の卒業生を社会に送り出しました。2025年には桃山学院教育大学と合流し人間教育学部を、さらに2026年には地域産業との連携を重視した初の理系学部の設置を予定しています。

7000人規模の大学でありながら、キャンパス内では学部ごとに建物を区切っていないので、学生と教員の間の風通しが良く、英国聖公会の自由さと多様性を認める学風が根付いています。入学式などの行事は、チャプレン(大学牧師)が出席しお祝いの言葉を述べるなどキリスト教の伝統を感じることができます。また、ボランティア活動も盛んで、世界で社会貢献を行う機会もあり、特にインドネシアで行う国際ワークキャンプというプログラムは、本学の建学の精神である「キリスト教精神に基づく世界の市民の養成」を具現化する素晴らしい手段であり、40年近く続けられていることは大学というコミュニティを維持していく上で良い影響を与えています。このような伝統や活動は、学生たちに対して「世界の市民」としての意識や、社会的責任を醸成する一翼を担っています。

課外活動にも力を入れており、サッカー部やアメリカンフットボール部、ハンドボール部を強化指定クラブとしてサポートしています。特にサッカー部は、近年、プロ選手や日本代表選手を輩出しています。

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思考力を養うトレーニングを

高校生の頃、小田実さんの「何でも見てやろう」という本が若者の共感を呼び、私もその影響を受けて、大学生になったら海外に行くのが当然だと思い、アルバイトでお金をためて、タイやインド、フィリピンといった国々をバックパッキングで訪れました。さらにはヨーロッパ1カ月旅行も経験しました。また、国際経済を中心に勉強し、3、4年は開発経済学のゼミにも参加したり、空手で黒帯を取ったり充実した大学生活を過ごした後、銀行勤務を経て大学教員となりました。

教育に携わる中で最も課題に感じるのは、日本は完成教育の傾向が強いことです。教師が問題を出すと、ほとんどの場合1人か2人しか手を挙げません。もし間違った回答をしてしまうと、指摘されたり、周囲に対して劣等感を感じたりすることを嫌がり、分からないふりをしてしまうことが一般的です。米国では授業で教師が質問を出すと、全員が手を挙げ、答えが分からない生徒が指名されると、「分からない」と答えます。率直に意思表示する姿勢が米国では高く評価されるのです。日米の教育文化の違いの一つです。

人生の先輩として学生に伝えたいのは「考える力を身につけることが重要」ということです。高校までの教育は、定められた知識を学び正解を出すことに焦点を当てています。このやり方では、結局、自分の頭で考えることが少なく、教科書や参考書に書かれている内容をどれだけ効率よく覚え込むかが重要になります。社会はそんなに甘くはなく、教科書通りに進むことはまれです。銀行に勤めていた時は、自分で考えなければ問題を打開できないことばかりでした。学生にはそうした思考力を養うトレーニングを大学でしてほしい。自らの意志を持って主体的に行動し、熱いスピリットで生きていけるような人間に成長してほしいと思います。

桃山学院大学学長

中野 瑞彦

1956年生まれ。1980年東京大学経済学部卒業、1980年三井銀行(現三井住友銀行)入行。1987年ロンドン大学ロンドン・ビジネススクール卒業(MBA取得)。2003年桃山学院大学経済学部助教授。准教授、教授、経済学部長、副学長などを経て、2022年から現職。2023年から桃山学院教育大学学長を兼務。

https://www.andrew.ac.jp/