空港支え続けた技術
環境社会に貢献を

株式会社エージーピー

1965年の設立以来、駐機中の航空機への動力供給(電力・空調)を主軸に、特殊機械設備の設置や保守管理など、空港のインフラをサポートし続けてきたエージーピー。2050年までのカーボンニュートラル実現を目指し、航空分野でも脱炭素社会に向けた取り組みが本格化する中、エージーピーが提供する技術が空港のCO2排出削減につながると注目されている。高い技術力で日本のエアポートを支え続けてきた同社の目指す方向について、大貫哲也社長に聞いた。

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CO2削減で海外からも注目

「日本の空港で生まれ育った」というエージーピーが設立された1965年は、高度経済成長期で羽田を中心に国内線網が広がる時期だった。当時の航空機には、補助エンジン(APU)がなく、駐機中に必要な電力は大型のトラックなど外部から供給するため、飛行機が駐機するエプロン上に多くの車両が行き交う状況にあった。これを解消するため、国内の大空港に航空機用の地上動力設備(GPU)を設置するべく、国交省指導の下、大手航空会社が中心となって同社が設立された。以来、日本発着の国内・国際路線網の発展を、空港のインフラ事業者としてサポートし続け、存在感を示して来た。

 現在、同社は成田や羽田、関空や伊丹など国内の主要9空港に、地下埋設管を通じて航空機へ動力供給する埋設式GPUを設置している。大貫社長は「埋設式GPUの設置されていない駐機場や空港では、移動式のGPUで動力提供をしていますが、埋設式は供給車両が不要で長期に渡って使用が可能です。ライフサイクルコストが低く料金も低廉で、CO2の排出量がAPUの約10分の1に削減できることが一番の特徴です」という。

 現在の航空機は、駐機中もAPUを回すことで必要な電力を自らに供給できるが、航空燃料を消費して排気ガスと騒音を発生させるため、航空業界がカーボンニュートラルに向けてCO2排出量削減を大きな課題としている中で、GPUは一躍脚光を浴びている。大貫社長は「航空ネットワークの拡充に向け、空港のインフラとして動力供給事業を始めたわけですが、世界的に環境問題、脱炭素化が大きなテーマになり、CO2削減のテクノロジーとしてGPUが見直されるようになりました。まさに、今がターニングポイントだと考え、今後は ‘空港のCO2削減に挑戦する会社’ として存在感を高めていきたい」と語る。

 GPUは、環境改善のソリューションとして海外からも大きな注目を集めているといい、
「地下に埋設をする必要があるため、エプロン(航空機の駐機施設)の基礎工事時点からの導入が必要ですが、新設される空港であれば、インフラとしての整備が可能。日本独自の空港技術インフラの海外輸出として、政府の支援を受けられれば」と明かす。

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アフターコロナにウイングを広げる活用

同社は、SDGsや脱炭素化などが提唱される以前から、企業理念として「技術力を高め、環境社会に貢献する」を掲げていた。「創業当初から、そういったところに着眼していた先輩方は先見の目があった。2050年までにカーボンニュートラルを実現することが宣言されたタイミングで社長に就任したのも、何かの巡り合わせと感じています」と力を込める。

また、動力供給と並ぶ主軸事業である空港の特殊設備の保守管理(エンジニアリング)事業でも新たな展開を始めている。その一つが、空港で手荷物などを搬送するバゲージハンドリングシステムの保守管理ノウハウの応用だ。EC需要の拡大に伴い飛躍的に増加する物流倉庫に、情報システム(ビッグデータ)によるIOT、AI、センサー技術などを活用し、ジャストタイムで自動的に商品がピックアップされてベルトコンベヤで搬送されるシステムが設置されている。エージーピーでは、空港で培った技術を、物流倉庫の搬送システムに応用し、設置、保守管理業務にウイングを広げている。「メーカーを問わずに保守管理できる技術力を持っている企業は日本にそう多くない。長年、空港で提供していた我々の技術力と実績を認めていただいた結果、当社のエンジニアリング事業の需要が拡大している」と胸を張る。

航空・空港を主戦場にしてきた同社は、コロナ禍の痛手も大きかったという。大貫社長は「日本の空港で生まれ、育てていただいた当社ですが、GPUの地方・海外展開を試みていますし、エンジニアリング事業の空港外への拡大も始まりました。第2の創業期として、日本の主要空港から、地方、海外、そして空港外へと、拡大、成長、発展していきたい」と意気込む。

「アフターコロナに向けていかにウイングを広げていけるか」というエージーピーの挑戦は続く。

株式会社エージーピー代表取締役 社長執行役員

大貫哲也

1962年、東京都出身。1985年、慶応義塾大学経済学部を卒業後、日本航空に入社。常務執行役員経営企画本部長を経て、2013年にジェイエア代表取締役社長に就任。2021年、日本航空を退任し、株式会社エージーピー代表取締役社長に就任。

https://www.agpgroup.co.jp/