耐震補強工事で
地震大国を守る

ケアンズ・イノベーション株式会社

阪神大震災で建物が倒壊し、多くの命が失われたのを目の当たりにし、耐震補強の技術開発に尽力してきたケアンズ・イノベーションの小口悦夫代表。自らを「地震被害軽減企業」といい、ローコストで短期間で施工が可能な耐震補強工事を開発し、「地震から人命を守るだけでなくSDGsにもつながる」と語る小口代表に思いを聞いた。

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低コストで短期間。補助金対象の耐震補強工法

 小口代表は、1995年の阪神淡路大震災で、妻の実家の様子を見るため発生4日後に神戸に赴き、その惨状を目の当たりにした。学生時代から建築を学んできた小口代表にとって、建物の倒壊などによって多くの命が失われたことは、自分の歩んできた道が全て否定されたかのような衝撃があったという。「家を建てるときには行政に建築確認を申請する必要がありますが、自分はそれまで地震はもちろん、台風などの災害にも耐えられる家に建築確認申請がおりていると信じて疑っていなかった」と振り返る。

そこから「何としても地震に耐えうる家を造らなくてはならない」と耐震補強や倒壊防止工法の研究・開発に尽力する。神戸で復興住宅に関わったあと、東京に戻り防災基本条例の策定にも加わった。その中で小口代表は、従来の耐震補強工事は費用がかさみ、施工のハードルが高いことを痛感。「耐震補強の助成金対象となる商品を開発したい」という強い思いで、外付け耐震補強工事「e-パワーウォール」を開発、2021年11月に販売を開始した。

一般的な耐震補強工事は部屋や壁を壊して施工するが、「e-パワーウォール」は建物の外側から施工するため、居住している空間に影響することなく工事ができるので、経済的で工期も短縮でき、ゴミの軽減にもつながる。小口代表は「日本は地震大国ですが、頻繁に起こる小さな地震に慣れきってしまい、人々の危機管理意識が低いと感じることも多い。そういった方々に『この程度の負担で耐震補強ができるならやりたい』と思ってもらい、耐震補強へのモチベーションに火をつけたい」と語る。

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老朽化した住宅を再生してSDGsにも貢献

販売開始から約3000棟の施工をした小口代表は、「私一人の力では限界がある。行政や不動産業界に、『e-パワーウォール』を活用してもらいたい」と訴える。安心・安全な日本社会を実現するためには、耐震補強が施されている住宅の流通が必要だといい、人気のリノベーション住宅にも警笛を鳴らす。「耐震基準を満たしていない老朽住宅をリノベーションして販売しているものもよく目にします。老朽住宅を耐震性のある建物に再生できる『e-パワーウォール』を利用してもらえれば、より安全な形で建物の寿命が延びるはず。不動産業者はもちろん、行政がこうした耐震技術を推進してほしい」と力説する。

また、近年問題となっている倒壊の恐れがあるなど周囲に迷惑をかける「特定空き家」や、老朽化した家屋が多く、地震の際に倒壊や延焼の危険性がある「木造密集地域」などについても、小口代表は「『e-パワーウォール』なら、安全に長く住んでもらえる住宅へと生まれ変わらせることができる。そういった取り組みこそがSDGsなのではないでしょうか」と語る。

生涯を通して「耐震」を突き詰めていきたいという小口代表は「一つの技術を通じて、国民の生命線に関われる。自分が開発したもので人の命を守れたら幸せです」と笑顔を見せる。「自分は両親と『自分のやれることを精いっぱいやる』と約束して生きてきました。生涯を終えて『何をしてきたんだ』と問われたときに、『地震で何万人もの命を救ったのが自分だよ』と言えたらすごく素敵な人生なんじゃないかなと思う」と話す。小口代表は、これからも地震大国の日本を守るため耐震補強工事の大切さを訴え続けていく。

ケアンズ・イノベーション株式会社代表取締役

小口悦夫

1950年、栃木県出身。1971年、中央工学校卒業後、田中土建工業株式会社に入社。1983年開業。耐震補強や倒壊防止工法の研究・開発に尽力。2000年、株式会社ケアンズ・コーポレーションを設立。2014年、介護事業に参入し、2020年、ケアンズ・イノベーション株式会社を設立。2021年に外付耐力壁工法 「e-パワーウォール」を発売。

https://keanzu.com/