新たな眼内レンズを
仙台から世界へ
医療法人Tri-NEXT ASUCAアイクリニック仙台マークワン
仙台にある「ASUCAアイクリニック仙台マークワン」は、眼内レンズ手術、硝子(ガラス)体手術、目の周りのまぶたなどを治療する手術専門のクリニックだ。同院を運営する医療法人Tri-NEXTの理事長であり、主任執刀医でもある野口三太朗氏は、白内障手術や眼内レンズ(ICL・IPCL)のスペシャリストとして知られる。目の治療における最新の技術動向や日本の現状と課題など話を聞いた。
多数の手術を担当しながら臨床研究やデバイス開発も
野口先生は、目の手術、特に白内障手術や眼内レンズによる近視・乱視矯正手術(ICL・IPCL)の分野のプロフェッショナルとして、これまで難症例に対する手術などを数万件以上の執刀経験を持つ。海外の最新技術・情報を国内の学会で発信するなど、日本の白内障治療をリードする存在だ。野口先生は「日本の眼科治療は、かつて世界をリードしていたが、現在は経済的な理由から衰退傾向にある」と指摘する。「この分野は、レンズの進化が医療の進化なので、発展がすごく早い。去年当たり前だったことが今年はもう古くなっていることも多く、その速さについていく、けん引していくとなるとかなりの知識と努力が必要になってきます。そうなると、日本は、発展が著しい海外企業をフォローする立場になってきているのではないかと感じることが多くあります」と現状を訴える。
そんな中、野口先生は年間3000件以上の手術を担当しながらも、常に最新情報をキャッチアップし、臨床研究や、海外の眼科医やエンジニアと新たなデバイスを開発をするなど診療以外の領域でも精力的に活動している。
野口先生は「昔から独学でもいろいろと勉強しているので、その知識がベースにある。それに加えて、海外での活動を続けていった結果、トップの医師や開発者に自分のアイデアを取り入れてもらうようになり、最先端の技術に携わることができていると感じています」という。
元々手先が器用だったことが、細かくて難しい顕微鏡手術が多い眼科を専門に選んだ理由だったというが、「発展の速さも大きな魅力だった」と振り返る。「眼内レンズの開発など工学という他分野の発展がそのまま医療に持ち込める。100年前と同じ手術をしている科もありますが、眼科はそういったことがほとんどない。そのアップデートの速さとデバイスものが好き、という気持ちが原点になっている」とレンズ開発にも携わる理由を挙げる。
常識に疑問を持つ姿勢で世界的に高い評価を
日々、進化しているという眼内レンズによって、近視や老眼の矯正も可能になっている。質の高い手術を受けられれば、それは患者の人生を変えるインパクトがある。その一方で地域や医師の格差があり、患者が最新の治療を受けられないケースも多いという。「患者さんが本当はこうなりたい、という希望があるのに医師に『そんな技術はないよ』と言われて終わっているけど、実はそれが可能だということも結構ある。例えば、質の高い近視や老眼の矯正も可能だけど、それを知らない患者さんも多い。そういった地域における医療の遅れを是正し、あきらめている方々を救っていきたい」と力を込める。
野口先生は、白内障手術で従来交換不可能と言われていた眼内レンズを交換可能にする新たなレンズを開発、今年アメリカと中国の学会で発表し、世界でも注目を集めている。「10年後には、レンズを交換できるような人工水晶体嚢が一般的になってくると思います。それにプラスして、その眼内レンズがセンサーのような役割を果たし、身体の状態をモニタリングできるようになる可能性もあるのではないかと考えています」とさらなる可能性を語る。
今後も臨床に関わりながらの研究開発を続けていきたいといい、「患者さんは教科書なんですよね。悩んでいることやこんな現象が起きて困っているなど、今の医療の限界もそういった声から見えてきますし、そこから次の研究課題が見つかることも多い。臨床を行いながらの研究開発がやはり最先端だと思います。今後も最新の医療知識や術式を駆使し、研究成果を仙台から世界へと発信していきたい。常識に疑問を持つ姿勢を大事にしながら、医療の限界に挑戦し続けていきたい」と意気込む。
医療法人Tri-NEXT ASUCAアイクリニック仙台マークワン理事長・主任執刀医
野口三太朗
東北大学医学部卒業。仙台を拠点に白内障手術や眼内レンズ(ICL・IPCL)のスペシャリストとして活躍。世界的な受賞歴も多数。海外の眼科医やエンジニアらとともに新たなデバイスを開発するほか、保険診療のみにとらわれない世界初の医療手術についても積極的に行っている。
https://asuca-eye.com/