【大学特集】
独創性を育む環境

京都大学

京都府京都市に位置する京都大学。京都大学の前身である京都帝国大学は1897年創立され、130年近くの歴史を刻む。湊長博総長は型にあてはまらない”精神的自由”が新たな創造につながると語る。

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自分自身を発見する

京都大学は1897年に京都帝国大学として歴史が始まりました。明治時代の日本において、近代的な高等教育機関として設立され、その後、1947年に京都帝国大学から京都大学へと改称。自由と調和を重んじることが理念の基礎にあります。

本学はいわゆる「自由の学風」と言われますが、それは規制や慣習にとらわれないことだと認識しています。つまり、いかに精神的に自由であるかということです。その根幹にあるのは独創性の重視。新しい知を作り出すことは、現在まで受け継がれてきた本学の使命です。創造には妥協しない。その点で、自由と独創性は本学を象徴する特色であるといえます。

自由というのは自分自身の発見であると私は考えています。人は自分にどういう能力や特性があり、どういう人間であるのかを最初から分かっているわけではありません。さまざまな経験を通して自分を発見していく。その力を与えるのが大学という場だと思っています。学生一人ひとりが持っているポテンシャルを発揮してもらうためにも、型にはまった日々を送るのではなく、自分自身を解放していただきたいです。

また、リスクを計算してから行動するのではなく、自分にできることなら新しいことに挑戦することも大切です。物事を目の前にして損得を先に考えるのではなく、自分の意欲に壁を作らずに取り組む。自分のポテンシャルを制限せずに、失敗を恐れずのびのびと活動してほしいです。

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興味関心と社会的ニーズ

私の研究対象はがん、つまり医学の領域です。数年の研究を経たある時、自分は実際にがんと闘っている患者様のことを詳しく知らないと気づいたのです。加えて、社会で生きている人たちや、がんで苦しんでいる人たちとの繋がりを失ったら、私が研究する必然性がなくなってしまうと感じました。これをきっかけに、私は医師免許を活かし、医療の現場に飛び込むことにしたのです。以降、約10年に亘り、臨床の現場を経験し、日々患者様に対応することは大事だと思いましたが、やはり、私はがんそのものにアプローチしたいと思い、基礎研究に戻りました。研究に対するモチベーションは強いままでしたが、質が変わりました。医学の領域ですから、ただ興味関心のためではなく、何かしらの形で人々に還元する必要性を改めて感じたのです。

自分の興味関心に社会的なニーズが加わると、モチベーションがもう一段上がるでしょう。私の場合は医学でしたが、何によってドライブがかかるかは人それぞれ。誰も教えてくれないので、自分で見つけるしかありません。大学はその機会を与える場だと思っています。そのため、自分の理想的な人生の目標、そしてそれを達成するためのドライブを発見していけるといいですね。

京都大学総長

湊 長博

1951年富山県生まれ。京都大学医学部卒。医学博士。専門は免疫学。米国アルバートアインシュタイン医科大学研究員、自治医科大学助教授などを経て、京都大学医学部教授に就任。2010年京都大学大学院医学研究科長・医学部長、2014年理事・副学長、2017年10月よりプロボストを務めた後、2020年10月に京都大学総長に就任。

https://www.kyoto-u.ac.jp/ja