日本では数少ない
山岳医兼山岳ガイド

Ai Mountaineering Clinic

Ai Mountaineering Clinicは、山岳医としても活動する三井愛医師が運営する登山ガイドオフィスだ。病気を抱えていても安全に山を楽しめるようにと、医師とガイド、両方の視点から登山をサポートする三井代表に聞いた。

01

臨床医だからこそできる登山ガイド

総合病院で呼吸器疾患・救急医療を担当する臨床医でもある三井代表は、山に魅了された高校時代から、一般的な登山はもちろんアルパインクライミング、沢登り、雪山など、現在もさまざまな形で山を楽しんでいる。山好きがこうじて登山ガイドや山岳医の資格も取得した。真っ黒に日焼けした三井代表の姿を見て、患者から「先生と一緒に富士山に登りたい」と言われたことが、病気を抱えている人の登山をサポートするという今の活動につながった。

「自分がクライマーであり、登山ガイドの資格を持っているからこそ、普通の医師ではできないサポートができると自負しています。患者は『やってはいけないこと』と戦っていることが多く、登山なんてもってのほか、と言われることもありますが、安全に楽しめるような方法もある。もちろん山に登ったらいけない人もいますが、そこも含めて私がどう対応したら患者さんが幸せになれるのか。そういった生き方まで、相談に乗れるような医療を提供したい。それが原点ですね」

実際に高尾山や湯河原の幕山など患者とともに出かけることも多い。思った以上に喜んでもらえると笑顔を見せる三井代表は、登山の前にそのリスクを評価できるのも強みだという。「どれくらいの山なら大丈夫か、という判断はもちろん、山のことをよく知っているからこそ、この山のこのルート、という選び方も提案できる。徐々にレベルアップしていくことにもお付き合いできるし、自分が登山するときも、心拍数や水分、血糖値などそれをすべて考えて登っているので、登山中のペース配分や、水分・糖分補給のタイミングなどきめ細やかな配慮ができる」と自信を見せる。

また、病気を抱える人以外にも健康に不安のある高齢者の登山支援も積極的に行っている。「90歳の男性の富士山登山の計画を立てたのですが、台風が直撃したので、近いうちにまた挑戦したい。健康だけど90歳を超えて富士山に登るのは心配だということで、何カ月もかけて準備しました。そういったサポートも、医師であり登山ガイドだからこそできる」と胸を張る。

02

登山を楽しむ自分から元気を受け取ってほしい

山岳医としては、もどかしい思いを感じることもあるという。海外では、救助隊に帯同し現場で鎮静剤を使うなどある程度の処置を任され、権限も大きいが、日本では山岳医に現役の臨床医が少ないことから、新参者というイメージが大きいという。三井代表は「その場で医療行為ができる人たちは山岳医だけなので、できることは限られていますが、救える命が増えるかもしれない。まずは、山岳医という活動をもっと広めていきたい」と意気込む。

高校生の時に、たまたま見かけた山岳部の集団のかっこよさに圧倒されたことが山に興味を持ったきっかけだったといい、最初に登った南アルプスの北岳・間ノ岳・西農鳥岳の絶景から、登山に夢中になった。「登山は誰がやっても絶対に楽しいと思うんです。年齢問わず、同じ山頂を目指せるだけでなく、一つ登ったらまた次の山といったように目標もできる。もっと登山の楽しみや素晴らしさを広めたい」といい、そこには大人も子どもも好きなものを見つけて夢を持ってほしい、という思いもあるという。

「今の時代、子供だけではなく、大人にも夢がない。逆に言うと大人に夢がないから子供も夢を持てない。まずは好きなことを見つけることが大事だと思う。自分の好きなことを突き詰めていくこと。日本経済の元気にもつながっていくのではないかと思います」

「自分が元気で幸せでないと、他人を幸せにできる医療はできない」と言う三井代表は、大好きな登山を楽しむ自分の姿が周りの元気につながればと考えている。「病状的に気力がなくなってしまうことが多いのですが、『山に登りたい』と言ってくれるというのは、それだけ前を向いて、ガッツを持って生きていこうと思ってくれたということ。それくらいの元気を私から受け取ってもらえたということで、そういう医療提供も山岳医の一つの形ではないかと思います。山岳医兼山岳ガイドとして、山の素晴らしさや健康登山を伝えるために、今後も山に登り続けたい」と情熱を燃やす。

Ai Mountaineering Clinic代表

三井愛

981年、大阪府出身。横浜国立大学経済学部卒業後、一般企業に就職。その後、聖マリアンナ医科大学医学部に。卒業後は総合病院等で呼吸器疾患や救急医療に携わる。日本登山医学会専門医、日本医師会認定健康スポーツ医、日本山岳ガイド協会認定登山ガイド(ステージII)、等様々な顔を持ち活動の幅を広げられている。

https://www.aimountaineeringclinic.net/