【大学特集】
社会貢献できる人材育成を

四天王寺大学

大阪府羽曳野市に位置する四天王寺大学。その歴史は聖徳太子の時代までさかのぼる。須原祥二学長は、その伝統を踏まえ、実践面で社会貢献できる人材の育成を目指す。

01

起源は1400年前

四天王寺大学の起源は、約1400年前の聖徳太子の時代、四天王寺の創建時に置かれたという仏法を学ぶための組織にまでさかのぼります。四天王寺は平安時代になると、民衆信仰の拠点となり、江戸時代には上方の人々の信仰を集めました。その四天王寺が近代なって、仏法修行の道場である敬田院(きょうでんいん)の事業の継承を掲げて創設されたのが学校法人四天王寺学園です。当初は女子教育に専念していましたが、戦後に開設された短期大学と女子大学が男女共学となって今日の四天王寺大学になりました。聖徳太子が隋に留学生を送り出して、最新の学問や技術の習得に力を入れたことを受け継ぎ、実践面で社会貢献のできる人材の育成を目標としています。

四天王寺大学は開学以来、約半世紀にわたって教員養成に取り組んできました。教育学部開設後は、近畿圏でも有数の教員養成校として実績を重ね、大阪市を除く大阪府内の現職教諭のうち、1000人以上が卒業生です。経営学部の公共経営コースは毎年多数の公務員を輩出しており、新設された看護学部は2023年に最初の卒業生を送り出しました。2024年には人文社会学部を文学部と社会学部の2学部に分け、文学部は日本学科と国際コミュニケーション学科の2学科で、自分の興味関心のあることを勉強するだけでなく、両学科共通の学びとして日本文化の世界発信に取り組みます。社会学部は社会学科と人間福祉学科からなり、心理学や歴史学も含めた多様な学びを展開します。

また大学は、南大阪の多くの自治体や農協・企業と連携協定を締結しており、多くの学生が地域で活動しています。とりわけキャンパス所在地の羽曳野市と、キャンパス行きバスの発着駅のある藤井寺市の2市長については、毎年キャンパスで開催される地域課題解決企画のコンテストの、審査員をお願いしています。教育実習も地元の教育委員会の協力で、2年生から4年生にかけての実習期間外に、配属された実習校で、ボランティア活動に取り組む学校インターンシップ制度を導入しています。こうした実践的な取り組みを通して、学生は個性を発揮しながら他者と協調する経験を重ねています。

02

「自分探し」に挑戦する大学生活

私は元々小学校に入る前から歴史に興味を持っていました。祖父が話をしてくれる歴史上の人物やお城の物語が好きだったからです。中学生の頃から本格的に日本史の勉強をしようと思い立って、原始時代から新書などの本を読みあさりました。でも原始から古代にたどり着くと、邪馬台国や古事記・日本書紀などの論争に接して、自分の納得できる結論に出会えず、大学で日本古代史を専攻しました。大学では専門的な研究方法やさまざまな学説を学びましたが、結論から一層遠ざかったように思います。でも、なぜ、どう分からないのかが、少し分かりました。今でも、古代史にとどまったまま新しい時代に進んでいない次第です。

学生には大学の4年間で「自分探し」に挑戦してほしいです。具体的に何に取り組むのかは、実のところ大して重要ではありません。こだわりがあればそれでもいいし、こだわりがなければ偶然出会ったものでも構いません。そのことを通して自分を客観的に見つめ直して自分の長所と短所を自覚し、短所を克服するよりはむしろ長所を生かす方法を考えてほしい。実社会では、自分の望む通りの環境が整うことはまずありません。自分の置かれた状況で自分をいかに生かせるのかが大切です。何かこだわりがあってそれを掘り下げるのはいいことですが、こだわりの無いことは決して悪いことではありません。たとえ周囲から押し付けられたことであっても、そのことを通して何らかの学びがあるはずです。えり好みせずいろいろなことにチャレンジして、自分を社会で生かすすべを身につけてほしいですね。

四天王寺大学学長

須原 祥二

1967年大阪府生まれ。92年に東京大学卒業。2002年に同大学院博士課程修了。22年4月から現職。

https://www.shitennoji.ac.jp/ibu/