マグネシウムと共に
不屈の挑戦を

株式会社宮本製作所

これまで数々のマグネシウムの特性を活かした商品を世に送り出してきた株式会社宮本製作所。宮本隆代表は「世界の誰よりもマグネシウムを愛しています」と自負するほどの情熱家であり、その源泉から成功に至るまでの挑戦を続けてきた不屈の経営者でもある。その真意に迫った。

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「下請けから脱却する」、勇気と行動力

今から約60年前、宮本製作所は機械部品の加工を目的として現代表の父が創業した。高校卒業後に入社した宮本代表は、徐々に頭角を表すようになり、やがて事業の中核を担うまでになっていく。その時に芽生えた思いが、「会社を下請けの立場から脱却させたい」という考えだった。同社は当時、自動車部品の加工が主な収益源となっており、発注を請け負う各企業から毎年にようにコストダウンの要請を受けてきたという背景もある。

「我が社は他社ができない仕事だけを一途にやってきたという自負があります。ですから、一切コストダウンの要請に応えたことがありませんでした。当時はそれでも会社を存続できるだけの受注をいただいていたのですが、10年後も同じ状況が続くとは私には思えなかった。そうした予測のもと、早く下請けを脱却したいと考えていたんです」。

宮本代表はその後、自社主導による製品開発に着手する。目を付けたのは、当時まだ未知数の金属と言えたマグネシウムだった。軽量で強度の高い特性を活かし、マグネシウムによる自動車部品を新たに開発。各自動車メーカーに持ち込み意見を伺うところから挑戦はスタートした。その品質は自動車メーカーの担当者も認めるものであったというが、大きな壁として立ちはだかったのがコストである。「コストを抑えるという点だけに焦点を絞ってしまうと、マグネシウムではなくアルミニウムが優勢でした。そのためマグネシウムの部品はなかなか採用に至らなかったのです」。

しかし、マグネシウムのポテンシャルを誰よりも信じていた宮本代表は、その後も新たな製品開発に幾度となく挑戦する。機械切削の振動を最大限に吸収するボーリングバースリーブ、熱帯魚の水槽に入れるストーンなど、マグネシウムの特性を活かした開発を続けていったのだ。そんな中で辿り着いたのが、マグネシウムを洗濯補助用品として活用した商品である。同商品は発売以来から着実に実績を伸ばし、今では宮本製作所の主力商品として経営を下支えするまでとなった。そして亡き父の跡を引き継いでから20年が経った今、かねてから思い描いていた下請けからの脱却を見事に実現。今なおマグネシウムによる更なる開発を模索し続けている。

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「人のために何ができるか」を探求して

「成功を願うとき、重要なのは何度辛酸をなめても諦めない気持ちだと思います」。宮本代表は自身の挑戦の道のりをそう振り返る。「常に私は”可能性”から発想してきました。どれだけ売れなくても、どれだけ借金があっても、それは一時の問題であって、これから数年先に我が社は私が描いている夢のような会社になると常に確信を持って仕事をしてきたんです」。

かつて宮本代表は、開発した商品を置いてもらおうと販促先を自ら回り、断り続けられたという苦い経験がある。当時はまだ世に知られていない未知の商品であったため、「魅力が伝わらなかったのだろう」と反省の弁を口にする。しかしどんな逆境であっても、諦めないという不屈の精神だけは失わなかった。それが原動力にもなっていたのだという。

「どんな良い商品でも、それが売れるようになるまでには2年3年はかかるのが常であり、その期間を死の谷“デスバレー”と呼ぶのだそうです。そのデスバレーを乗り切ったものだけが先行者利得を取ることができるのだと考えてきました。まさに今私たちはそのデスバレーに真っ只中にいるのだから、何とかしてここから上がっていかなきゃいけないという一念なのです」。

不屈の挑戦だからこそ、これからも終わりのない挑戦は続いていく。現在は持続的な地球環境に貢献する新たな事業に踏み出している最中だ。

その一つが、洗濯排水に含まれる窒素、リン、カリウムという肥料の三大栄養素を利用した有機農業への進出である。大切な水を循環させながら有機農業を行い、誰もが安心して口に出来る農作物作りを日本各地でスタートしているところだ。さらにはこの洗濯排水に含まれる栄養素を肥料として利用する手法を導き出し、特許も取得。その背景には世界中で巻き起こっている水不足の問題を解決したいという宮本代表の願いを込められている。
「世界各地で水不足が深刻化しており、特に農業用水が不足していると言われています。人口増加や異常気象による大干ばつや紛争要因ともなる水不足にまつわる様々な問題の解決策として、弊社が取得した特許がお役に立てるようになればいいですね」。

時には誰も歩んだことのない荒地を切り拓いて、挑戦を続けてきた宮本代表。未来に向かう若者たちに向けて、こんな言葉を伝えてくれた。「『ボーイズ・ビー・アンビシャス』!この言葉は本来、「青年よ、大志を抱け」と訳されているのですが、私はこれを「青年よ、野心を持て」と訳したいと思います。できればその野心は、世のため人のために自分に何ができるのかを探求して実行していくという、より大きな野心であってほしいですね」。

株式会社宮本製作所代表取締役社長

宮本隆

これまで数々のマグネシウムの特性を活かした商品を世に送り出してきた株式会社宮本製作所。宮本隆代表は「世界の誰よりもマグネシウムを愛しています」と自負するほどの情熱家であり、その源泉から成功に至るまでの挑戦を続けてきた不屈の経営者でもある。その真意に迫った。 

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