床ずれ・フットケア
に特化した訪問診療

医療法人社団心愛会

一度発症してしまうと、治療が難しく長期化してしまう床ずれや糖尿病による足の壊疽(えそ)などへ訪問診療を行う医療法人社団心愛会。全国的にも数が少ないという難治性創傷(治すのが難しいキズ)専門の訪問診療に力を入れる木下幹雄理事長に、その思いを聞く。

01

退院後の生活を総合的にサポート

形成外科医として、大学病院や総合病院で診療を続けてきた木下理事長は、床ずれや糖尿病による足の壊疽(えそ)などが発生すれば完治が難しく、入院が長期化してしまうという問題に直面していた。「入院患者が40~50人に増え、かつ外来も1日約150人という状況になってしまい、明らかに病院で許容できる能力をオーバーしてしまっていた。地域に難治性創傷を診療できる医師が存在しなかったため、病院での急性期治療が終わった後を引き継ぐことができず、自宅や施設へ退院させることができなかったことが原因だった。」と振り返る。その問題を解決したいという思いで2017年、難治性創傷を専門的に診療する訪問診療所を開設した。

木下理事長は、こうした床ずれや糖尿病性壊疽などの難治性創傷を専門とする医師は全国的にも少ないと指摘する。「床ずれや糖尿病性壊疽の診療では、傷の局所を診るだけでは不十分で、日常生活のベッドを含めた寝具の調整や入浴などの清潔管理、足の循環状態改善を行わないと完治しない。退院して自宅に戻っても、そこまで評価し治療できる医師がほとんどいないため、完全に治してからではないと退院させられないという状況もありました」と言う。訪問診療では、傷の治療だけでなくベッド周りや入浴環境を整え、ヘルパーが訪問する回数やデイサービスの利用など治療に必要な生活全般のアドバイスまで、退院後の生活を総合的にサポートしている。

 床ずれなどの患者は、高齢で衰弱していることが多く、通院が困難なケースも多いため、在宅で専門的な治療を提供することが必要だ。さらに形成外科だけでなく、糖尿病や泌尿器などさまざまな専門性を持つ医師や、創傷専門の看護師もそろえている。木下理事長は「在宅医療というのは、一般的に積極的な治療は行わず、自然経過を追いながら看取りを行うという側面が強い。しかし、我々の目指す在宅診療は、治すため、生きるための診療の追求です。」と力を込める。

02

あきらめない訪問診療で地域医療に貢献

木下理事長は、慢性の傷に携わるようになって、“あきらめない医療”を意識するようになったという。「床ずれや足の壊疽(えそ)といった目を背けたくなるような疾患は、やはり気合と根性がないと絶対に治せない。もちろん全力を尽くしても悲しい結果に終わることもあります。ただ、それでも全力で家族と患者さんを支えて、寄り添うことを貫きたい。『あきらめない訪問診療』がモットーです」と語る。

現在、同院のような専門的な医療を在宅診療で提供するクリニックは全国的に見ても少ないという。だが、高齢化や糖尿病患者の増加といった時代の流れを背景に、その需要は高まるばかりだ。

「高齢者を全般的に診る在宅診療は増えていますが、それ以上に専門的な医療を提供できる診療所を拡充させていくことが課題だと考えています。だが、今は専門性のある医師が地域医療に進出できる仕組みがない。これは医療保険の制度の問題ではありますが、そういった部分も今後変えていかねばならない」と指摘。さまざまな専門性を持つ医師が地域で開業しやすくなるような共同開業プロジェクトも独自で進めている。

木下理事長は「私もそうでしたが、資金面やスタッフ集めなどをリスクに考え、なかなか開業を踏み切れない医師も多くいる。そういったリスクをサポートする形で一緒に開業するような仕組みづくりを展開していきたい。我々のような“専門性の高い訪問診療”のスタイルを全国に広めたい」と意気込む。

医療法人社団心愛会理事長

木下幹雄

1974年、東京都出身。東京大学医学部を卒業後、同大学形成外科に入局。杏林大学医学部付属病院や東京西徳洲会病院など東京、神奈川、静岡の大学病院や総合病院で研鑽を積み、2017年4月にTOWN訪問診療所を開院。2018年に医療法人社団心愛会を設立し、理事長に就任。現在は東京、横浜、京都で計6院の診療所を運営。

http://www.townhomecare.com/