ポジティブ思考で
子どもの幸せを追求

こども園ひよし幼稚園

岐阜県各務原市にある学校法人小島学園認定こども園ひよし幼稚園は、少子化が急激に進む中、市内で唯一園児数が増えている幼稚園として注目を集めている。「子育ては楽しいもの」としてポジティブ思考の子育てを提唱する小島宏毅理事長に話を聞いた。

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肯定的な声かけで主体性を伸ばす

小島理事長は園児数が増えていることについて、「子どもたちにとって一番いいことをしようと思ってやってきたことの積み重ねが実を結んだ」と話す。保護者から「子どもを大事にみてくれる幼稚園」だと高く評価される同園の特徴は、子どもたちに否定的な言葉をかけず、「やめなさい、早くしなさい」といった指示や命令を禁止し、子どもどもたちに「今、何をしたらいいのかな」と促すような声かけをするという指導方針が、保護者から「子どもを大事にみてくれる幼稚園」だと評価されているという。

「やめなさい、早くしなさい」といった指示や命令を禁止し、子どもたちに「今、何をしたらいいのかな」と促すような声かけをする。小島理事長は「自分から進んで行動を起こさせるように仕向ける。これは行動経済学でいうところのナッジ(行動を後押しする)という概念ですね。自分が思う方向に引っ張っていこうとするのではなく、気付かせてあげる。そうやって関わることで子どもの主体性が育ち、自立心につながっていきます」と説く。

さらに、米国アメリカの心理学者J・Pギルフォードの理論に基もとづいたSI遊びと呼ばれる知能遊びを通し、子どもたちがいきいきと育っているかどうかを判断する発達診断プロフィールを導入。毎年園児一人一人発達診断プロフィールを作成し、それを元に保護者面談をするのも特色の一つだ。

子どもの発達状況だけでなく、保護者が家庭でどう子どもと関わっているかも分かるといい、「両親が過保護すぎる、口やかましいといったところまでデータに表れる。保護者に伝えると、皆さん本当にびっくりされます」と話す。導入以来約20年、面談は小島理事長が自ら担当し続けている。「毎年200人以上となかなか大変ですが、園の信頼に関わるので、自ら結果を伝えるようにしています。子どもたちがいきいきと育ってほしいというのはもちろんですが、保護者にも少しでも子育てを楽しんでもらいたい」と力を込める。

「子育ては負担ではなく、楽しいものだと思ってほしい」という小島理事長は孫子の兵法を子育てに当てはめた「孫子の兵法に学ぶ~勝利の子育て術」(文芸社)を書いた。「子育ては毎日が戦争だと感じている人いるのかと思ったとき、孫子の兵法も子育てのヒントになるんじゃないかと思った。時代は変わっても人間は同じで、心理戦の部分は子育てにも通じるものがある。この本にまとめたノウハウは、家庭で生かせるはず」と自信をのぞかせる。

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選ばれる理由のある園に

独自の教育に取り組み続ける小島理事長は、少子化問題について、「異次元の少子化対策で児童手当を拡充すると言われても、22年度の国民負担率は47.5%。そもそもの気持ちが前向きになれない。少子化対策は、もっとポジティブになれる世の中にすることが一番大事」と訴える。

「ポジティブ思考になれば明るい未来が見えてくるはず」と語り、「ポジティブ心理学には、自分の能力は努力と経験で向上できないという硬直マインドセットと、その逆で向上できると思える成長マインドセットがあります。成長マインドセットを持てるようになることが子育てでも大切」と語る。

小島理事長は「人間とは本来、どこにでも幸せを見つけることができるものだと思う。それを“ホモ・エフティヒア”と呼んでいます。ラテン語とギリシャ語を組み合わせた私の造語ですが、成長マインドセットにホモ・エフティヒアの考えを元にした幸福マインドセットを加えて、『うれしい』『楽しい』『面白い』という感情を抱ける体験をする。そういった幸福マインドセットが子育ての中に生まれていけば、少子化は解消されていくのではないでしょうか」と持論を展開する。

子どもたちだけでなく、保護者も幸せであってほしいと願う小島理事長は、これからも「選ばれる理由のある園でありたい」という。「今後、幼稚園や保育園の競争はより激しくなり、不適切保育や安全管理ができていない園は淘汰されていくはず。子どもが幸せになれる園として本物にこだわったところが選ばれて残っていく」と見通している。

こども園ひよし幼稚園理事長

小島宏毅

1961年、岐阜県出身。幼稚園長として保育制度や子育てに関する著作、児童文学作家として絵本を発表している。著書に「ママうれしいわ、が子どもを育てる~孫子の兵法を知れば、子育てがわかる、変わる」(幻冬舎)。児童文学作家として「100歳になったチンチン電車~モ510のはなし」(幻冬社)など。

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