取引先を約30倍へ
業績アップの秘訣
株式会社ハタメタルワークス
関西圏を中心に、産業用電池や電源装置、配電盤などに使用する銅の加工を行う株式会社ハタメタルワークス。父親から同社を継いだあと、銅加工のプロフェッショナル集団として短納期・小ロットをキーワードに、取引先を約30倍へと増やした。畑敬三代表に業績アップの秘訣を聞く。
短納期・小ロットの銅加工が勝機に
1935(昭和10)年創業と長い歴史を持つ同社だが、畑代表は当初「継ぐ気はなかった」と振り返る。大学を卒業後、今とは畑違いともいえる繊維系の企業に就職。営業マンとして7年間勤務した。「当時は業績も悪化していましたし、自分が継ぐのか、会社自体を畳むのか<いろいろ葛藤がありましたが、父が病気を患ったこともきっかけになって、継ぐことを決意しました」と話す。だが、そのタイミングで取引先の環境が変わり、仕事が半減してしまい、スタートから壁にぶつかる。手当たり次第にさまざまな企業へと営業をかける中で、短納期小ロットの銅加工で苦労している会社が多いことに気づき、「その力をつけて会社の強みにすればいい」と実践したことが突破口になった。
まずは、製品の素材を銅に絞ることにして、短期間での納入と生産数を柔軟に対応できるように工場のシステムを変更した。畑代表は「小ロットだと利益が少ないと思われがちですが、小ロットの受注を多く集めればいいだけで、大量生産は競合他社も多く、メリットが少ない。素材を銅に絞ったこともそうですが、周りが得意でないものを担えるように変えていきました」と語る。また、短納期で小ロットの受注では、よりスピード感を求める取引先が多いので、「早くミスのない製品を納品するため、新たな機械を導入して、生産性を上げることはもちろん、各工程で慎重にチェックを重ねています」と品質に自信をのぞかせる。また、他社に先駆けて2004年11月には、環境マネジメントシステムに関する国際規格ISO14001の認証を取得。銅加工の製造から出荷までの各過程で、環境保全に貢献していることも強みの一つだ。
社員の働き方改革で生産性も向上
他社が対応しづらい短納期かつ小ロットの銅加工というニッチな分野で業績を伸ばしてきたが、そこには社員の働き方にも工夫があった。15年ほど前から、生産性向上のための働き方改革を実施。中でも、予定している作業が終われば、定時より1時間早く帰れるという制度は功を奏した。「早く帰れるとなると、作業も早くなるし、自ずと工夫するようになる。社員一同、短納期・小ロットという当社の特徴を分かっているので、そこを意識していることも効果的に作用していると思います」と語る。
日本のものづくりが衰退していると言われる今、畑代表は「人口も減っていく中で、仕事量も減っていくでしょうし、国内の製造業は今後どうなっていくんだろうという思いもあります」と不安も口にする。だが、そこは銅の加工というニッチな仕事を続けていくことで打破したいと意気込む。「材料の高騰はありますが、ニッチな分野は他がやりたがらない仕事ですから、そこをさらに強くしていくことで乗り切れるはず。あとは、ロスを減らす取り組みなどで対応できれば」と強調する。
父親から経営を継いだ直後から、さまざまな改革を行ってきた。22年には工場も新設し、25年度には年商を8億から10億へと目標を定めたが、その目標はすでに本年度中に達成しそうだという。畑代表は「予定より早いタイミングとなったのは、工場も広くなり、生産性が上がったこともありますが、順調に取引先が増えたことも要因と考えています。当初は3社だった取引先が今は約150社。最低1個から受注可能ですので、自社で対応していたものを必要な分だけ小ロットでお願いできるなら、と注文をもらるようになった事例もあります」と説く。
今後、若い世代の雇用も積極的に進めたいという畑代表は「今の制度は変えず、より働きやすく社員が喜んでもらえるような関係を作っていきたい。がんばっていいものを作って届けていけば、喜んでいるお客さまがいる。それが我々のモチベーションですから。サービス業ではないですが、製品を通して喜びを伝える。そういったことを社員にも感じてほしいと思っています」と力を込める。
2代目に就任したときが一番大変なタイミングだった。だからこそ、奮起できたと笑う畑代表。他社が敬遠する仕事にこそ勝機があると、銅加工のプロフェッショナルとして同社にしかできない仕事を続けていく。
株式会社ハタメタルワークス代表取締役
畑敬三
1975年、大阪府出身。大学卒業後、繊維・化成品の専門商社である蝶理株式会社に就職し、7年間営業職に従事。その後、家業であるハタメタルワークス(旧社名:畑鉄工)に入社。7年後に代表取締役へ就任。現在に至る。